ロアルド・ダール 「サウンド マシン」2024年1月15日

ロアルド・ダールについて

ロアルド・ダールの小説は好きである。ダールの短編を読んでから、日本で翻訳された本は殆んど読んでいる。しかもいずれも他に類をみない奇想天外な展開を繰り広げられるものばかりである。

ダールは1916年イギリスのサウスウェールズに生れた。

母親はオックスフォード大学への進学を望んだが、18才でシェル石油に入社、アフリカのタンザニアに転勤。スワヒリ語をマスター。

第二次大戦が勃発するやイギリス空軍に志願。リビヤ、ギリシャ、ハイファと転戦、大いなる戦果をあげて、1942年アメリカの大使館づきの武官となりワシントンに転勤。

勤務中から短編を書きだす。自伝的小説「少年」ついで「単独飛行」を出版するや、以降次々と短編小説を刊行する。(1990年11月23日没)

 

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「サウンド マシン」 ロアルド・ダール

  あなたに似た人 より  早川書房 新訳版Ⅱに収録

 

物語「内壁の塗装もされない、たゞ一部屋だけの小屋で、左の壁ぎわに長い木の作業台が置かれていた。その上に雑然と置かれたコードやバッテリーや小さな尖った工具の中に、子供の棺のような形をした3フィートほどの長さの黒い箱があった」 この箱こそクロースナーが造った世界で類をみないものであった。「簡素な機械を作ったんですけど、その機械で証明できたんです。人間には聞こえない、さまざまな音が存在することが。私の耳にはなんにも聞こえないのに、この機械の針は空気を伝わる音の振動を記録します。」「人間の耳が感知できない周波数の振動を拾って、それを可聴域の周波数に変換するんですけど、使い方はだいたいラジオのチューナーと一緒です。」

 

彼は公園のブナの大木まで行き、その機械を近くに置き、ヘッドフォンをつけて機械の電源をいれると、暫らくの間ブーンという声が聞こえてきた。斧を取り上げ、木の幹の根本をめがけて思い切り斧を振り下ろした。刃があたった瞬間、ヘッドフォンから尋常ならざる音が聞こえてきた。初めて耳にする音だった。

彼は「ブナの木よ・・・、あゝブナの木よ・・・ごめん、本当にごめん・・・・、でも傷はきっと治るから」と謝る。友人の医者を呼んで傷にヨードチンキを塗ってもらうのだ。(2020年7月20日 三刷目)

 

この3年後にテレビで、木の葉を虫の幼虫に食べられた木は、葉から匂いを出して、近くの植物に危険を知らせる。すると近くの植物は自らの葉から毒素を出して被害を防いでいるとの放送があった。

しかもその毒素は弱いもので虫を殺す程ではないとの事であった。その理由は虫に花粉を媒介してもらう必要性があるからだと言う。また被害に遭った葉の出す匂いは虫の天敵を呼ぶ効果もあるという。また茸の菌は地下に張りめぐらされ、木の間の連絡と栄養の伝達も行っているということが明らかになったと言うのだ。

 

ダールの書いた荒唐無稽とも言うべき物語は、実は極めて現実味を帯びて来ていることになっている。ダールの短編はそのことごとくが、私達の意表をついて驚かされる。

 

なおダールの夫人はアメリカ女優パトリシア・ニールで、美人女優として有名。

1949年キング・ヴィダー監督の映画「摩天楼」にゲィリー・クーパーの相手役として出演している。堅物のクーパーがニールに惚れ込み、離婚騒ぎを起こしている。

パトリシア・ニールはダールとの間に4人の娘を設けている。

 

ダールの本

「少年」1989年10月31日初版発行

「単独飛行」1989年11月30日初版発行

           共に早川書房

他にハヤカワ文庫から文庫本8冊がある

一冊読めば全部読まずにはいられないことうけあいである。