埴谷雄高、鶴見俊輔  講談社   2023年12月1日

埴谷雄高、鶴見俊輔    講談社

対談「死霊」の新しさ    高橋源一郎、鶴見俊輔の中に

鶴見「アメリカ兵4人の脱走にかゝわって驚いた。アメリカ兵といっても19、20歳ぐらいの田舎の、ちゃらんぽらんのお兄ちゃんだ。だからそんな連中に何かしゃべらせてもばかなことをいうんじゃないかと危惧を持ったら、そのアメリカ兵達が、自分を『公』つまり、アメリカとの関係がどうあって、本来どうあるべきだから、そのかゝわり方において、自分は内なるアメリカを裏切れないから脱走するという言い方を、はっきりしたので驚いた」と語っている。(べ平連での活動中)

 

また日本の権力機構の成りたちについて「なぜ一番は宛てにならないかと言うと、明治5年にかゝわるんだけれども、先生にたゞ一つの答えがあると言う信仰を教えられたことなんだ。問題を先生が与えると、そのたゞ一つの正しい答えは先生の心の中にある。

そうすると『はい、はい』と手を挙げる人間は大体学者犬の集団になるんだよ。学者犬は365たす337というとパッと当てる。それは調教師の顔を見ているから、答えがちゃんと書いてあって、それで当てる。

似たようなことで教師がそこに居ると、正しい答えを念写する習慣なんだ(笑い)。

一●生るときから、それが東大を出るまで、ずっと続くと、その間に教師が変わるから、転向、また転向、無限の転向を繰り返す。転向が体の習慣になちゃっているから、不思議と思わないだよ。転向するのが本来の自分なんだから。

官僚になって高文に行くでしょう。大正時代だったら、美濃部憲法で通るんだ。今度はナチスがヨーロッパに出てきたから、カール・シュミットの法学とか何かが入っちゃって、美濃部さんは国法に反すると裁くんだ。美濃部憲法で上がった人間が美濃部さんを裁くんだ。一種のサイボーグになっちゃっている。で、それから1930年代でしょう。で負ける。アメリカにぐっと変わる。それまでずっと修練できているから、平気なんだ。だから日本人の指導者の養成ということについては何も変わっていない。

「その転向のもとの型は教育制度そのものにある。だから一番は危ない。高橋『そうか教育というものは無限の転向のすすめでもあるわけなんだ。」

鶴見「日本で大学というのは、国家ができて、国家がつくった大学なんだよ。問題はこの事を大学教授はわかっていないんだ。結局、何でも国家を弁護するようなところに行くようにつくられているんだ。だけどヨーロッパはそうじゃないし、若い国のアメリカでさえそうじゃないんだ。アメリカでハーバード大学ができたのは1636年だ」(アメリア建国1776年)私はハーバード大学にいたんだけれども、2年半しか学校に通っていない。捕まって牢屋に入っていた、にも拘わらず牢屋に入っている私に卒業証書をくれた。それがアメリアの大学の特色だった。そういうものを日本の大学は欠けているんだ」

教育面から見た日本社会の欠陥を見事に言い当てている。日大のていたらくを見るとつくずくそう思う。