和田 大諷

東京葛飾区金町在住

佛画・書・刻字・篆刻を制作

20数回の個展を都内、ひたちなか、ロスアンゼルス、サンクトペテルブルグで開く。過去の個展は展示会の項目をご覧ください。

 

2021年鳩居堂の個展(2021年3月30日~4月4日予定)は延期となりました。新たな開催予定が決まりましたら

本ページにてお知らせ致します。

  

著 書

 2014年2月

  「大諷の映画狂時代」

  2018年1月「大諷のへそ曲り

            読書日記」

  2019年7月  「大諷の観音の道」

  2020年11月  「大諷の無辺楽事」

 

ボクシングは若い頃からのファンにして、頭の中に過去の試合やボクサーの名前が詰まっている。

毎週月曜日のTV観戦記の記事は公平な目での厳しい批評が面白い。世界戦代表的試合は殆ど欠かさずアップしています。

 

 

私と「金泥の書」( その一 )魅せられ、そしてライフワークに

「金泥の書」について   

  

(一)50才で銀行を早期退職し隠居生活にはいって3年。1993年に銀座の緒方画廊で初の個展。佛画18点を以て開催して以来23回の個展となった。内容は佛画を中心に書、刻字、版画、篆刻と拡がった。

しかし20年も経つと片手間仕事のような現状に、自分の非力は十二分に自覚しているものゝ何か物足りないライフワークとしての「自分だけの作品」を探している自分を発見した。その頃銀座伊東屋で歯科医師であり、金泥作家でもある静岡県清水市在住の福島久幸さんの個展で金泥の書に出合い、その美しさに驚嘆し、金泥の書について教授を頂いた。

私自身大腸癌の手術直後で再発の懸念もあった事から、余命も考慮、金泥の書に取り組もうと決意した。

金泥の書は天平時代に写経の作品が作られ、平安時代平清盛が厳島神社に奉納した納経で有名であるが、その後急速に後継者が失われて、歴史に埋もれて来たのである。

現代の金泥作家は私の知るところ福島久幸さん以外には寡聞にして聞かないのである。

何とかこの伝統を引き継いでいく事の一助になればとの思いが強まった。

しかも書家の人達に期待するのは難しい。第一、費用が掛かりすぎる。従って書き直しが出来ない。総て一発勝負である。時間も相当掛かる為である。

 (註)福島氏は2014年8月25日死去 享年92才。

 

(二)先ず取り組んだのは無謀にも源氏物語全巻書写である。

本来ならば一行2㎝幅で書く予定であったが、これでは80巻6~700mとなる事と費用が掛かりすぎる為に1㎝幅で38巻で延べ300mとした。延べ100万字である。

毎日5時間正座して取り組み、2年間を要した。完成は2011年11月末であった。

途中個展の作品も作りながらである。

以降平家物語、風姿花伝、奥の細道、方丈記、徒然草、古事記 等々を描き継いでいる。

全部書き直しや誤り書きは無い。

 

次回はこれまでどのような作品を作ってきたかを「 金・銀 泥の書 」作品一覧 ( 現時点

31巻)を取り上げます。

 

(三) イ.先ず書写する作品の字数を数える。巻子が2巻以上になる場合は、どこで区切るか、巻子を何巻にするかによって字の大きさも決める。使用する本は「岩波文庫」が大半である。

ロ.次に作品の内容を理解する事も欠かせない。私の場合源氏物語は原文及び与謝野晶子訳、谷崎潤一郎訳そしてイギリス人アーサー・ウェィーリーの英文訳からの訳の3部であったが、中でもウェィリーの訳が出色で源氏が世界的に有名になったのはひとえにウェィリーの英訳が見事であったことであり、20世紀初めのプルーストやジョイスの20世紀文学と同様にヨーロッパで読まれたのである。社交界、美に対する感覚、そして人の内面についての表現等現代文学として読まれたのである。

また与謝野訳と原文と比べると優雅さや雅びさは比べるべくもない。原文の美しさは格別である。 

 

(四)「用紙」紙は何を使用したら良いかが分からず、とりあえず書道用品店に依頼し、紺紙、紫紙、濃茶紙を注文。紙を漉いてもらい、染めてもらう。

大きさは1.8m x 1.0mであり、少量では受けてもらえず、とりあえず20枚注文した。

同時に金泥も注文。1袋0.4g、時価である。膠は福島さんの説明によれば鹿膠1.3gを100㏄の蒸留水に入れて40度で溶解すると1.3%の溶液となるとの事であったが、市販の溶液で代用、ただし希釈率は不明の為に自分で判断するしかない。

私はこれを字の幅が 0.5㎝~1.0㎝の場合は4~5%、1.5~2.0㎝幅の場合は7%、4㎝となると12%~15%としている。

 

銀泥の場合はすべて18%~20%に溶解したものでなければ定着は難しい。又季節にもより、一日では終了せずに溶液が残った場合等の事もあって、本文にとりかゝる前に別紙に1~2字試し書きをして、乾いたあと指で擦って定着を確認する。

金・銀泥は高価の為に、最小量の量で定着するかを見定めて使用する事が大切である。

私の場合0.4gを使用して3000~4000字数としてひと文字1㎝ 幅で書けるのである。

 

(五)「筆」使用する筆は鼬(イタチ)毛の面相筆を使用しており、硯を使用しない。

(絵皿使用)為に1本で100万字は書けるのである。

 

(六)金泥の書で日本の古典文学を書写する場合、毎日一定時間必ず書く事。

私の場合来客があり、夫婦喧嘩があっても酒を飲んでも休まないで書いている。

そこに座ったらすぐにスイッチが入り、書くモードが出来なければ長文の書写は到底出来ないのである。

 

(七)書き終わったらこれを猪牙で磨く。書かれた金泥の書は平らにみえても、細かい凹凸があり、その為に乱反射して光らないのである。為に表面を擦って磨き、平らにして反射を統一する事によって光らす事と、金泥を紙に定着させる二つの意味がある。

象牙は表面に細かい管があり、その管に金泥が付着するが猪牙にはこれがない為に猪牙が使用されるのである。

これからも日本の古典文学を書き続けていきたいものだ。

 

ご参考:本ホームページの項目の中に「源氏物語書写」があります。巻子38巻を全巻 動画にてご紹介しておりますので是非ご覧ください。