硯の話 その9

硯の話 その9  1-41、42
良い松花江緑石を探していたところやっと手に入った。中国東北地区の中心部を流れる黒龍江最大の支流で、吉林、ハルピン、チャムなど沿岸の都市と結んで北朝鮮との国境にある白頭山の天地に源を発して流れるのが松花江である。
清朝は北満女真族の後裔で、中国に於ける征服王朝である。清代前半の康熙帝、乾隆帝と
った英主が現れて、文化は大いに育った。特に康熙帝は清朝発祥の地吉林省より松花江緑
石を得て、製硯を大いに奨励した為に「温潤なること玉の如く、紺緑にして瑕無し。

質は堅にして細、色は 嫩(どん)にして純、滑して墨を拒まず、渋して筆を滞らせず、能く松煙をして浮艶させる」と云わしめた。


康熙、雍正、乾隆3代に亘って採掘されたが大半は官制品で採掘の困難さと産出量の少なさから廃坑となり、伝世する松花江緑石の名品は希少であり、産出はない。
この硯は裏面に青銅尊の浮彫があり、鉄民の刻あり。