和田 大諷

東京葛飾区金町在住

佛画・書・刻字・篆刻を制作

20数回の個展を都内、ひたちなか、ロスアンゼルス、サンクトペテルブルグで開く。過去の個展は展示会の項目をご覧ください。

 

次回鳩居堂での個展は2019年4月2日(火)から7日(日)の予定です。

 テーマのひとつが「紫式部日記」を紺紙銀泥の巻子にまとめたもので、これまでの文字より半分の細字にして上・下を一巻に纏めることが出来た。

なお 恒例の東大名誉教授大場 秀章先生の講演内容も「紫式部日記」と植物がテーマとなります。

 

著作 2014年2月

    「大諷の映画狂時代」

   2018年1月「大諷のへそ曲り

     読書日記」

 

ボクシングは若い頃からのファンにして、頭の中に過去の試合やボクサーの名前が詰まっている。

毎週月曜日のTV観戦記の記事は公平な目での厳しい批評が面白い。世界戦代表的試合は殆ど欠かさずアップしています。

 

 

10月8~10日 山形国際ドキュメンタリー映画祭に行く

1986年山形市誕生100年を記念して創設され隔年開催されている山形国際ドキュメン

タリー映画祭は2017年10月5日~12日までの8日間開かれた。
121の国と地域から1146作品の応募があり、今回の大賞は「オラとニコデル 聖餐式」

であった。

開催中の8日~10日に観客として参加、3日間で計8本の映画を見ることが出来た。

うち6本の作品を紹介してみたい。 


10月8日
①『100通りの1日』1971年/ レバノン/監督クリステャーン・カージー/65分
    

冒頭山岳地帯での激しい銃撃戦が強風吹きすさぶなか戦われている。
土地を追われたパレスチナ人達の日常生活がその一方で語られる。不安定な経済の中で
の厳しい労働条件、困難な子育て、授業料が払えずに学校から締め出される子供達、戦地
では死の間際で、残る借金の返済を頼む兵士。一方では一部のブルジョアが厭世的で怠惰
な生活を送っている。どのような状況にあっても、こうして生活は存在する。
ながく続く戦争が日常化している実態をリアルに映像化している。思えば第二次世界大戦
の日本でも、戦下のなか、畑の芋を盗み、川で魚をとり、防空壕に入り断えず空腹を抱え
ていた事を思い出す。

   監督のカージーは1968年パレスチナ解放人民戦線に参加。

   本作品はヌーヴェルバーグの影響を受けて、その詩的表現が巧みである。

 

② 航跡(スービック海軍基地)2015年作 /アメリカ、フィリピン作品/277分

                               インターナショナル・コンペティション作品
         監督 、撮影、録音 ジョン・シャンヴィト( 1956年ニューヨーク生れ
         映画監督、キュレーター、教師、ドキュメンタリー作家 )


1521年マゼランの率いる遠征隊がセブ島に上陸して、フィリピンを支配したが、1862
年カビテの暴動に端を発した独立運動はリサールを首領とする革命運動に移行。
彼の処刑後はアギナルドに指導された。1898年スペインの支配に対するキューバ人の反
乱の為、キューバの砂糖キビ、タバコの栽培に資本を投下していたアメリカはキューバ

を支援、4月スペインに宣戦布告、米西戦争が始まったが、4ヶ月でスペインを撃破。
その結果アメリカはプエリトリコ、グァム、フィリピンをスペインから割譲される。
フィリピンで激化した民族独立運動に対しアメリカはこれを武力で弾圧、各地の革命軍
の支配地の人々を徹底して皆殺しにしている。

そのことは米国内にもひた隠しにされた。


その後アメリカはフィリピン人民を慰撫する為に形ばかりの独立と議会を許可するが、
有権者は1%にみたなかったのである。


さて、ルソン島スービック湾にあった米海軍基地は1991年のフィリピン上院決議に基
づきフィリピンに返還されたが、基地返還後に残された化学物質、重金属類、石綿、PCB
等による深刻な環境破壊がもたらされた。しかしアメリカ政府もフィリピン政府もこれを
放置し続けている。それにつけてもアメリカの人種差別とそれに基づく大量殺戮と迫害
振りは常軌を逸しており、現在のアメリカをみても本質的には変っておらず、オバマ大
統領に至ってその克服の緒についたかにみえたが、トランプ政権になって再び戻りつゝ
ある。人類は人種差別と戦争を克服する事が出来ない愚かなる生き物なのであろうか。

          

    『 航跡 スービック海軍基地』ジョン・シャンヴィト監督 Q & A

 

10月9日
『願いと揺らぎ』日本/2017/監督・撮影・編集・録音: 我妻 和樹 /146分
                                      インターナショナル・コンペティション作品

 

2011年3月11日 東日本大震災による地震と津波に襲われた宮城県南三陸町の波伝谷
(はでんや)を追っている。漁業で暮らす人々は何もかも失って、個人の事業から共同
作業にかえて力を合せてワカメ漁を行い、お互いに不協和音のなかで3年を目処に生計
をたてている。希望を失いバラバラになった村民を奮い立たせ、気力を復活させる為に
伝統行事の「お獅子さま」復活に取り組むのだ。その中心を担う若者の一人が祭りの進
め方に違和感を抱いて悩むが、それが何なのかが今一つ観客に届いてこない。
しかし何処の男も駄目で意気地がないが、土壇場での女性達の圧倒的な存在感は目を見
張るばかりの説得力をもって迫ってくる。   

   

   監督の我妻は2005年3月より宮城県南三陸町波伝谷での民族調査に参加し
   ており、3・11の大震災に自身も現地で被災している。
   本作品は震災前から波伝谷に深く関ってきた自分だからこそ伝えられる
   ものがあるのではと語っている。

 

④ 『 緑の山 』1990年/スイス/128分/監督・原案 フレディ・M・ムーラー
スイスのニトヴァルデン準州ヴェレンベルグに政府は放射性廃棄物の最終処理場を建設
する計画を発表。これを支持派、反対派にインタビューしている。

特に山で牧畜業を何代にも亘って営む農民の日常生活を克明に追っており、その生活は

過酷であり、厳しいものであるが、それに誇りと自信を持っているのが良く分かる。

だからこそこの計画は許せないのだ。

我国での福島の原発大災害のあと、事故の原因も現在の実態も全く明らかにされないまゝに放置されている現状にも拘らず、再稼動は次々に始まり、あろうことか原発の輸出ま

で推進する政府のあり方と、これを許している日本国民に暗澹たる気持にさせられてし

まうのだ。

 

              『 願いと揺らぎ』我妻 和樹 監督 上映後の Q & A

            

             『 緑の山 』より 

 

10月10日
『 ドンキー・ホーテ 』スペイン、ドイツ、イギリス/監督 チコ・ペレイラ
                      脚本 チコ・ペレイラ 外 86分
                      インターナショナル・コンペティション作品


南スペインの村で質素な一人暮らしを送っていた73歳のマノロは突然アメリカへの旅を
思い立つ。かってチェロキーインディアンが辿った3500kmの涙の旅路を踏破するのが
目的だ。同行するのはロバのゴリオンと犬一匹。別居している娘は父の心臓疾患、関節炎等の体調を心配するが、その娘の心配をよそに渡米の手続きが始まる。

ロバと犬を連れて手続きに歩き回るが、ロバを連れての渡米は困難を極める。

手続きは一向に進展せず、遂に断念せざるを得ないことゝなる。

ラストシーンはまるでアメリカに到着したかのような夕日の海を前にして終る。

橋を渡るのを極端に恐がるロバのゴリオンが長い首をマノロに密着させ、一層親密に

大きな目で訴えるシーンは、この作品を豊かなものにしている。

 

   マノロはペレイラの叔父で名付け親でもある。叔母と離婚したマノロとペレイラ
   の関係は断たれていたが、久方振りに訪れたところマノロは心臓病を患っており、
   関節炎にも苦しんでいたが、新しい親友ロバのゴリオンと緊密な関係を結んで
   生活していた。上映後 Q & A トークに入ったが参加者から多くの感想や質問が
   出された。共通していたのは全部が賛辞の言葉と追従であったのは残念。


   スペイン人民戦線の敗北とフランコ政権の傷あとがスペインの現在の文化にどの
   ような影響を与えているのであろうか。

 

    『 ドンキー・ホーテ 』 チコ・ペレイラ監督 上映後 の Q & A

 

⑥ 『オラとニコデル 正餐式』2016年/ポーランド/監督 アンナ・ザメッカ/72分

      インターナショナル・コンペティション作品

 

ポーランドに住む家族、離婚して現実に目をつぶり、酒に逃げる父親と自閉症の弟ニコ
デル。14歳の少女オラの3人の生活である。オラは間もなくやってくるニコデムの初聖
体拝領が成功すればもう一度家族がひとつになれるとの思いからニコデムに聖体拝領の
練習を強いるのだ。

別れた母親が新しい男との間に生まれた赤ん坊を連れて関係修復の
為に戻ってくるが、やはり関係修復は不可能で早々に赤ん坊を連れて母親は出て行く。


家の様々な仕事は一切が少女オラにかかって、大人たちは現実から逃げている。
頭のいいオラは必死でこの状態に耐えている。よくある家族のあり方の一つがこゝに写
し出されている。
女性らしい細やかさで丹念に作られた作品である。

 

   『 オラとニコデル』アンナ・ザメッカ監督 舞台挨拶

  

  『 オラとニコデル』アンナ・ザメッカ監督 上映後の Q & A

   2017年インターナショナル・コンペティションの大賞作品となった。

   

      『 オラとニコデル』上映後の Q & A 会場風景

  

    山形駅中 そば処 三津屋 にて夕食 帰途に就く