再び「稀勢の里」について

大相撲夏場所は白鵬29度目の優勝で終わったが、従来の圧倒的な安定感はやゝ薄れてきた感がある。稀勢の里は13勝2敗で一定の成績は残した。

苦手としてきた巨漢力士のバルト、琴欧州が引退、琴奨菊は怪我で低迷して死角は少なくなってきている。千秋楽の鶴龍との対戦をみると、鶴龍の巧さを、持ち前のパワーで粉砕した感があり、白馬富士に対しても自信をもっているようにみえる。優勝経験がないとは言え白鵬の対抗馬としての一番手にのし上がってきたのではないかと思わせる底力を表している。

 

碧山さえ気をつければ体力的に彼を上回る力士は見当たらないだけに、技術的には大いに問題はあるものゝ、恐るべきパワーはそれだけで他の力士にとって脅威となった。細かい事にとらわれることなく、このまま自分の力に自信をもって突き進んでいいのかもしれないと思うようになった。不器用なまゝ大成するかもとおもわせる。過去にあまり例のない力士として、大化けするのだろうか。

 

一方注目の遠藤である。身体の柔軟さも十分で、体格的にも恵まれ相撲も巧みで、将来性は大いに見込まれるが、最大の問題点は勝負に対する執念があまり感じられない事で、勝負事に不可欠な何が何でも勝つという気構えが見えないことは立会いの鋭さに欠け、相手に脅威を与えていないと見て取れる。

 

不器用な稀勢の里にみえる古風な勝負師の佇まいが私たちを魅了するのだが、遠藤にはなにやらサラリーマン風にみえるところに一抹の不安を感じるのである。