源氏物語アーサー・ウェイリー訳を読了する

ウェイリーは終盤宇治十帖になって、その能力を遺憾なく発揮し、登場人物をそれぞれ魅力的に表現することに成功した。特に「総角」のような特異な人物、中ば神経症的な潔癖症の人物を現代風に実に巧みに書き出している。
この小説のクライマックスは「浮舟」が「薫」と「匂」の間で次第に窮地に追い込まれ入水するところは熱が入って惹きこまれるし、男の酷薄な性分をも見極めているところがすごい。ウェイリーは宇治十帖を翻訳をしたときはさだめし快哉を叫んでいたことであろう。