2022年10月31日以来中断していた観戦記はコロナ禍によって、好試合を組む事ができない為もあり、取り上げる程の試合が乏しかったからである。
しかしこの試合は久方振りに見事な闘いでありスーパースター誕生を思わせるものであった。
WBO Sウエルター級暫定王座決定戦
ティム・チュー(オーストラリア)28才 戦跡 21戦全勝15KO WBⅭ、WBO1位
さてテイムの父親のコンスタンチン・チューはロシア、スヴェルドロフスクに1969年9月19日生まれの東洋系のロシア人である。95年にIBFスーパーライト級のジェイク・ロドリゲスをTKOに下しタイトル獲得、2年間保持した後1997年5月にビンセント・フィリップスに番狂わせの10R TKOに敗れてタイトルを失うが、1999年ミゲル・アンヘル・ゴンザレスを下してWBCタイトルを奪取、その後WBA、IBFのタイトルを獲得、怪我による1年以上のブランクの為WBA、WBCはタイトルを剥奪、再起戦でシャンバ・ミッシェルを3R TKOに下してIBFのタイトルを保持するが、2005年リッキー・ハットンと戦ったが、11R棄権してタイトルを失った。戦跡 34戦31勝2KO 2敗1無効試合 2敗はフィリップスとハットンによるものである。全試合をスーパーライト級で戦った。試合前も試合中も後も一切表情を変える事がなかった。パンチ力は際立っており、空手の掌底打ちのように右ストレートを打った。辮髪スタイルが珍しかったものである。
ティム・チューは2団体1位でタイトル挑戦を2年間待たされた揚げ句、やっとジャーメル・チャーロとの対戦がきまったが、そのチャーロの怪我によって延期となりその替わりにトニー・ハリソンとの対戦がきまった。
トニー・ハリソン(米国)32歳 戦跡 33戦29勝21KO 3敗1分 前WBC Sウェルター級チャンピオン、 WBO3位 4団体チャンピオンに挑戦して、これを判定に下したがリターン・マッチで好試合を繰り広げたが敗れてタイトルを失っている。左ジャブのスペシャリストで試合巧者である。ニックネームは「スーパー・ハード」(とてつもなく凄い奴)。試合前両者を紹介時にハリソンに観客から大ブーイングが浴びせられた。
チューのオーストラリアでの人気は絶大なものである。
1R チューはガードを高く掲げてゆっくりと前進、圧力をかける。ハリソンは左手を下げて、左ジャブを打ち易くする為にデトロイト・スタイルである。ハリソンはロープに詰まるが、チューの接近のスタイルが掴めず、左ジャブが少く、ヒットもしない。チューの左ジャブ、右ストレートは鋭い。
2R 1ラウンド同様チューの圧力は変らず、ハドソンはロープに詰まったまゝ。両者接近したまゝ速いパンチを振うが、お互い僅かの差で躱すスピード感ある緊迫した戦いに会場静まる。
3R 距離は一段と狭まり、チューのハリソンの左ジャブを右拳で防御するや、右フックでハリソンぐらつく。チュー、それ以上の深追いせず、ハリソンはこのラウンド先制のジャブから相手の打ち終わりを狙うスタイルに変更している。
4R ハリソンの左ジャブにいささかも構わず、チューの圧力は強まる一方。自信をもってきた。
5R チューは接近してからのボディブロー5発、ワンツーからの左ボディ、右アッパーと多彩な攻撃で、一方的となってきた。
6R チュー圧力をかけて前進するが攻撃は一服か?
7R チュー、コーナーで集中打のあと、一呼吸。さほど相手がダメージを受けていないと判断したようだ。
8R チューの左ジャブ、右ストレート、左ボディ3発、右アッパーと攻撃。途中レフリーは試合をストップして床を拭かせる。濡れたようだ。
9R チュー、圧をかけることなくリング中央で戦い、ハリソンの左ジャブを右でブロックするや右フックを強打。ぐらつくハリソンに右フックからの右アッパーの5,6発連打でハリソンついにダウン。辛うじて立ち上がったものゝファィテングポーズがとれずにレフリーストップとなった。9R 2分42秒
終盤の止めは迫力満点の力強さであった。これで4団体王者のジャーメル・チャーロを下すことになれば、文字通りスーパースターとなる。華があり、スターの条件を兼ね備えた人気も世界的なものとなるであろう。
ちなみに父子二代の世界チャンピオンは過去5組ある。
1.グティ・エスバダス (父)
グティ・エスバダス Jr (息子)
2.レオン・スピンクス
コーリー・スピンクス
3.ウィルフレド・バスケス
ウィルフレド・バスケス Jr
4.フリオセザール・チャベス
フリオセザール・チャベス Jr
5.クリス・ユーバンク
クリス・ユーバンク Jr
例外として
モハメド・アリ
レイラ・アリ (娘)
会場 ニューヨーク マディソン・スクエア・ガーデン・シアター 2022年10月31日(試合日10月29日)
ライト級12回戦
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)34才 戦跡 18戦16勝11KO 2敗 元3団体統一ライト級チャンピオン。
挑戦者 ジャーメイン・オルティス(米)26才 戦跡 17戦16勝8KO 1分 NABF北米 / USBA米国ライト級チャンピオン。
1~4Rまでやゝ体格的に勝るオルテスが積極的に左ジャブを突いて主導権を握って優位に試合を進める。
5Rに入るとロマチェンコにエンジンが掛かり右ジャブを突いて前進。そのまゝ12ラウンドまで優勢を守って終了。
しかし試合はかなり競ったものとなって、従来ロマチェンコの右ジャブを中心にして圧力をかけ相手の上体を起して試合を進めてきたが、今回オルティスはロマチェンコの圧力に後退することなく左ジャブ、右ストレートで対抗、一方的になる事はなかった。ロマチェンコ対策を充分に練って試合に挑んできた事を窺わせた。
また、ロマチェンコの過去の栄光とボクシングの巧さに臆する事なく立ち向かったことも、この接戦を生んだと思われる。
判定は115:113、116:112、117:111でロマチェンコ勝利であったが、予想外の苦戦を強いられた前2試合の対中谷戦とリチャード・コミー戦の強く速い右ジャブで、相手を追い込み、そのあとは接近戦に持ち込んで自在にパンチを浴びせて、相手の戦意を失わせるその鋭さとスピードが明らかに欠けていたのである。
今年2月下旬ロマチェンコは兵役に就き機関銃を携えた軍服姿が報道されている。「私の故郷で戦争が続いているんだ。家族と一緒に過ごし、仲間たちと共に祖国を守らねばならなかった。ボクシングの事は考えない。未来の事も考えない。人生と家族を救う事だけを考えたんだ。」と語っている。
今年5~6月に4団体統一王者への挑戦が内定していたにもかかわらず。その機会を棒に振って母国防衛軍に加わったのである。8月トレーニングの為に再度渡米を果し、10ヶ月振りにリングに戻る事を決断。しかし兵役によるブランクの影響は予想以上に大きく、加えて加齢の影響もある。2023年に予定される統一王者デビン・ヘイニー(米国)に勝利するかは分からないが、しっかりトレーニングをして、しっかり準備をすることができればまだその実力はずば抜けており勝利する可能性は高いと思われるし、心情的に応援したい気持ちがある。ロマチェンコ頑張れ!!
なお ウクライナの首都キーウの市長は元ヘビー級の絶対王者のウラジミール・クリチコの兄 同ヘビー級王座に二人で君臨していたビタリ・クリチコである。
また、2020年10月17日の4団体統一戦で負けた対ティモフィオ・ロペス戦は前半ロペスの圧力に後退していたが、中盤以降主導権を取り返し終盤はロペスにダメージが蓄積しており、また有効打は断然ロマチェンコであったが不可解な判定で敗れたものである。
会場 米国 ニューヨーク州 ブルックリン バークレイズ・センター 2022年10月17日
( 試合日10月15日 )
1.WBC 米大陸ヘビー級タイトルマッチ フランク・サンチェス vs カルロス・ネグロン
2.WBC Sミドル級 挑戦者 決定戦 ケイレブ・プラント vs アンソニー・ディレル
3.WBC ヘビー級 挑戦者 決定戦 デオンティ・ワイルダー vs ロバート・ヘレニウス
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1.WBC 米大陸ヘビー級タイトルマッチ
フランク・サンチェス(キューバ)30歳 戦跡 21戦20勝13KO 1無効試合 WBC、WBOヘビー級3位に位置する実力者である。
対戦者 カルロス・ネグロン(プエルトリコ)34歳 戦跡 28戦25勝20KO 3敗
1R サンチェス早い決着を目指し積極的にパンチを振ってのKO狙いに出る。
2Rから5Rまでネグロン足を使って回りながらの左ジャブでサンチョスの前進を阻みながら距離をとって主導権を握って闘う。サンチェス踏み込みが足らず空回り。
6R サンチェス右ストレートがやっと当たって7Rからサンチェス勢いがでてきてパンチも当たり始める。ネグロンはじぶんの優位を確かなものとする狙いからか、やゝ攻撃を中心に前がかりの姿勢をとってきて、その為にサンチェスのパンチも●に始める。
8R サンチェス パワーパンチを振ってラッシュ、ネグロン鼻柱カット。
9R サンチェスの右ストレートでネグロン ダウン。立上ったネグロンも必死で打ち返し乱打戦となったが、こうなってはパンチ力に格段の差があるサンチェスのもの。ロープ際での連打でレフリーストップ。タイトル挑戦も目前であったサンチェスは大苦戦であった8R終了時ではイーブンであったろう。サンチェスはそもそもカウンターパンチャーで前に出てこないで、ジャブを多く突く相手は苦手なのであろう。これではタイトル挑戦はむづかしい。
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2.WBC Sミドル級 挑戦者 決定戦
ケイレブ・プラント(米国)戦跡 22戦21勝12KO 1敗 前IBF Sミドル級チャンピオン サウロ・カネロ・アルバレスとの統一戦で有利に闘いながら最後は力負けしてTKOに敗れてタイトルを失っている。
対戦者 アンソニー・ディレル(米)38才 戦跡 38戦34勝25KO 2敗2分 元WBC WBC Sミドル級チャンピオン。2019年ディビット・ベナビデスに敗れてタイトルを失い、以後これが3戦目である。
オッズは19:3でプラント。
1R プラント先手をとってジャブ、ストレートで攻撃開始。ディレルは始めから相手の打ち終わりを狙ってのカウンター狙いに徹しているようだ。
2Rも同じ展開でディレルのカウンター狙いが奏功して1,2Rやゝリード。
3R 両者とも特にディレルはエキサイトしているが手はでず。
4R プラント右回り動きながら左ジャブ、右ボディ3発が軽くヒット。ディレルの待ちのボクシングに対応してバリエーションをつけて闘い始める。
5R プラントの右パンチでディレル バランスを崩しロープに飛ばされる。ディレルこの流れを戻すべく前に出るが、プラント足を使ってこれを巧みに躱す。終盤ディレル猛攻を見せるがほとんどパンチは当らない。
6R 手数は断然プラントのもので、このラウンドの終盤プラントはディレルのパンチはこんなじゃないかとディレルのパンチのマネのパフォーマンスをみせる。
7R お互いのパンチの交換の少なさに観客からブーイングが始まる。
8R ディレル今の状態を何とかしたいとの思いから左にスイッチするが、状況に変化なく客からブーイングの嵐。
9R ディレルの右フックは初めてまともにヒットしてプラント タジタジとなる。プラントはその後何とかディレルのパンチは食わない事をを重点として闘っていたがラウンドの終盤プラントは左フックのボディブローのあと打ち終わりを狙ったディレルの左フックに合わせて速い左フックを顎にカウンタとして直撃、ディレルはマットに頭を打ちつけてしばし、立上れず衝撃のKO劇となった。
この試合はお互いにスピードのある技術戦でフェイントの掛け合い、後の先の狙いあい等スリルに満ちた試合となった。ディレルのカウンター狙いも良かったが前半に一発でも当たっていればどうなったか分からなかった。プラントは様々なテクニックを披露しどこからパンチが出るかわからなかったり、パンチに強弱をつけたり、やゝ変則的な動きだったりと流石と思わせた。これでアルバレスとの再戦となるか?
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3.WBC ヘビー級 挑戦者 決定戦
デオンティ・ワイルダー(米)36才 戦跡 45戦42勝41KO 2敗1分 ニックネームは「ブロンズ・ボマー(銅の爆撃機)」戦跡の2敗1分はいずれもタイソン戦である。
対戦者 ロバート・ヘレニウス(スウェ―デン)38才 戦跡 34戦31勝20KO 3敗 ニックネームはノ「ルディック・ナイトメア(北欧の悪夢)」
試合前のオッズは11:2でワイルダー。
1R ヘレニウス プレッシャーを掛けて前に出る。ワイルダーは足を使ってロープ伝いにサークリングしジャブ一発、右ストレート一発打つ。ヘレニウス ワイルダーをコーナーに詰めて前のめりになりながら右から左のフックを振うがその左フックに合わせてのワイルダーの右ショートフックが前頭部にヒット。ヘレニウス ダウン。目を見開いたまゝ暫らく立ち上がれずにKO決着となった。
ヘレニウスは全勝のアダム・コウナッキを二度に亘ってTKOに下し、一気に急上昇してきたが、今回体重を114.87㎏に増量し充分な体調に仕上げてきたが、ワイルダーのパンチのスピードとその威力は想像を超えていたようだ。ワイルダーとしては全力でない腕だけの右ショートフックで、倒すつもりで放ったものではなかったであろう。
しかしヘレニウスにとっては、しばらく立ち上がる事の出来ない程の威力であった。
全勝を続けてきたとはいえ、その相手コウナッキとはまさに異次元の実力であったのである。ヘレニウスの緩慢な動きとガードの甘さでは、ガードをガッチリとしても、その上からこれを打ち破る強力なワイルダーのパンチにはまして対抗できるわけもなかった。
ワイルダーの強打について過去に「俺に2秒くれ。そうすれば必ず一発で仕留めてやる。」と本人が豪語しているのだ。
何せ42勝のうち41がKOである。2敗1分けの相手はタイソン・フューリーだけが、その豪打に耐えうる唯一の選手で、彼以外は悉く倒されているのだ。そのフューリーでも3戦の中で何度もダウンを喫しているが、他の人にない驚異的な復元力がある為に激戦を制している。ワイルダーは対フューリー戦で壮絶なTKO負けを喫したあとの再起戦で、体重を97.29㎏に絞ってスピードを重視して仕上げてきており、以前と比べてかなりシェープアップした身体となり、見るからに細いなぁという感じであった。これでは痩せすぎの感あり、従来通り103㎏くらいが丁度良いのではと思うのだが・・・・。
ワイルダーの復活で、3団体統一チャンピオンのオレキサンダー・ウシクのテクニック、ワイルダーの豪打、タイソン・フューリーのインテリジェンスと無尽蔵なスタミナと横一線の様相を呈してきて、その他の選手達とはあまりにも実力の差があり過ぎるのが現状である。多分ヘビー級史上稀にみる状況となって面白い展開となってきた。
しかしワイルダーもフューリーも年齢の事もあり、決着はこの1~2年の間の事となるであろう。
1.ライト級8回戦 キーション・デービス vs オマル・ティエンダ
2.WBC、WBO Sフェザー級タイトルマッチ 元2階級制覇チャンピオン シャクール・スティーブンソン vs ロブソン・コンセイサン
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1.ライト級8回戦
キーション・デービス(米)23歳 戦跡 5戦全勝4KO 2021年東京オリンピック ライト級銀メダリスト。プロで3戦のあとオリンピックで銀メダル。そのあとでプロに再転向2勝している。ニックネームは「ビジネスマン」
対戦者 オマル・ティエンダ(メキシコ)戦跡 30戦25勝18KO 5敗 ライト級中南米ライト級チャンピオン。
1R ティエンダ圧力をかけて前進。デービスはやゝ退きながら左・右ストレートを打ち込む。
2R デービスは自分のテクニックに自信をもっており、防御も固く相手の出鼻を叩き、ティエンダが出るところにカウンターで対処の作戦。ティエンダが出てくるのはデービスにとっては有難いところだ。
3R ティエンダ前進してパンチを振うがデービスの足が速く追いつけない。出ないと左ジャブがとんできて、出ると出鼻を叩かれる。
4R デービスの左アッパーのカウンター巧い。
5R デービスの右ストレートのカウンターでティエンダ ダウン。立上ったところ、ロープに詰めての連打でレフリーストップ。5R TKO デービスの勝利。
さすがにオリンピックの銀メダリストはダテではなく、基本に忠実でスピード、テクニックも完成されたボクサーで、今後はランキングボクサーとの対戦で真の実力が試されるところだ。
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2.WBC、WBO Sフェザー級タイトルマッチ
元2階級制覇 チャンピオン シャクール・スティーブンソン 25歳 戦跡 18戦全勝9KO リオ 五輪でバンタム級銀メダル。前日計量でリミット130ポンド(58.96 kg) のところ131.6ポンド(59.69 kg )で2度目の計量を受けずにタイトルを剥奪された為、勝っても引き分けてもタイトルは空位となり、コンセイサンが勝った場合にはコンセイサンがタイトル獲得となる。サウスポー。
挑戦者 ロブソン・コンセイサン(ブラジル)33歳 戦跡 18戦17勝 8KO 1敗、1敗はタイトル戦でオスカー・バルデスに惜敗しての1敗である。 リオ五輪でライト級金メダルを獲得。アマ戦跡420戦405勝15敗。
1R 圧力をかけて前に出る。コンセイサン力を込めて左右を振う。
2R スティーブンソン前に出て、お互いの距離が近くなり、お互いのパンチが当たる距離である。圧力をかけられたコンセイサンは力を込めてパンチを振い、圧力を防ぐがスティーブンソンの防御能力の恐るべき高さにあって全く当らない。スティーブンソンの左ストレートでコンセイサンやゝぐらつく。
3R スティーブンソンは正面から圧力をかけて出る。退りながらコンセイサンの力一杯のパンチは全く当らず、当ってもガードの上で、スティーブンソンのパンチは相手の打ち終わりを狙ってコッン、コッンと軽いパンチを当ててくる。重点はボディブローだ。コンセイサンは自分の力一杯のパンチは全く有効打とならず、一方でスティーブンソンの軽いパンチはすべてカウンターとなり、ボディブローもあってスタミナが奪われていく。
4R スティーブンソンの圧力が強まりコンセイサンは押されて、やむなく力を込めてパンチを振い相手の前進を止めにかゝるが、精神的にも追い込まれ左ボディブローを打たれて膝をついてダウン。
5R コンセイサン挽回を図って左右を強振りするが全くヒットせず、一方のスティーブンソンの圧力は強まる一方で、そのプレッシャーに押されての反撃でスタミナが奪われ、ボディブローで腰が引けてきてパンチに力が無くなってきた。
6R 大勢は決定的となりコンセイサンは有効な反撃ができなくなる。
7~12R スティーブンソンは8R、10Rとコンセイサンを投とばし反則減点1をとられる。一方的な試合は変らずに終了。判定は117:109が2人、118:108が1人でスティーブンソンの圧勝であった。
スティーブンソンの試合振りは予想通りであったが、コンセイサンの場合はまことに無様なもので醜態を晒した。単調極まりない試合振りで、これでは、スティーブンソンを相手に対抗出来ないことは分かり切った事なのに何も対策を打ってこないことには対抗できないのは自明の事であった。
スティーブンソンの防御技術はとりわけ優れているので、いきなり強振りしても当たるわけもなく、軽いショートパンチを何発か打って、そのうち一発でも当たれば強いパンチを打っても良い。またはロープに詰めてボディを集中的に狙う手も良し。ボディを執拗に打てば相手のスピードも弱まるし、嫌がるためだ。無策のコンセイサンが良くオリンピックで金メダルを取ったものだと思う。
さて、スティーブンソンだが、防御技術の高い事は誰もが認めるところだが、その理由は強いパンチを打たない事が大きい。強打を振うと身体が固くなり、パンチを受けた時にダメージが大きい。為に50~60%の力で打ち、打たれた時のダメージを防ぐ事を優先しているのだ。その為に著しく魅力が失われるのだ。観客はテクニックもあるが、何といっても一発必倒の強打を求めており、この要求に応えるのがプロというものであろう。ライト級に転向して、テモフィオ・ロペスやジャボンティ・デービスや技術の粋ロマチェンに対抗できるか大いに疑問が残る。
尚、スティーブンソンは決まっている体重を落とす努力を拒否(730g)し、2度目の計量の時間に減量する努力を放棄して試合をする事は許すべからざる事であると思う。全ての競技は、ルールがあって行われるものである事からすれば、ルールを破ってもこれが許されるとなれば競技がそもそも成りたゝない。もっと厳しい罰が下されるべきであろう。
スティーブンソンは自分にはSフェザー級でもきつくなっているので今後はライト級で闘うことになるだろうと語っているが、なればSフェザー級の王座を返上して新階級で闘うのが筋というものだ。
WBC米大陸ライト級タイトルマッチ 試合日2022年9月4日
チャンピオン ホセ・バレンスエラ(米)23歳 戦跡 12戦全勝8KO WBCライト級9位。
挑戦者 エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国) 22歳 戦跡15勝14KO 1敗
サウスポー。
1R 立上り サントス 右左フック ヒット。2分過ぎサントスのパンチでバレンスエラぐらつく。右ジャブがカウンターとなりついでの右ストレートがヒット。
2R サントスの右ジャブからの左ボディブロー、ついでの右フックでバレンスエラぐらつく。しかし2分過ぎ、たたみかけるサントスに肩ごしの左フックでサントス ダウンのあとパンチを浴びせてサントスにー1の判定。しかし右・左のパンチでバエンスエラ ダメージ深刻。
3R サントスの左ストレートでバエンスエラ ダウン。立上ったがサントスの連打に対抗出来ずにバエンスエラにレフリーストップが宣せられてTKO負。バエンスエラは将来のスター候補でタイトルに挑戦する話もあったが可能性はなくなった。
WBOフェザー級タイトルマッチ 試合日2022年8月20日
チャンピオン エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)27才 戦跡 36戦35勝29KO 1敗 フェザー級と2階級制覇している。10度目の世界戦である。2020年10月10日ルーベン・ビラ戦に判定で勝利してタイトルを獲得。2021年4月24日クリストファー・ディアスを12R TKOに下し、2021年10月15日ジョエ・ゴンザレスを12R判定に下し、今回が3度目のタイトル戦である。
挑戦者 ドゥアルド・バエス(メキシコ)27才 戦跡 25戦21勝7KO 2敗2分
試合前のオッズは9:1でナバレッテ。お互いにオーソドックス。
1R バエスは左ジャブを盛んに突いて圧力をかけ前に出る。スロースターターのナバレッテは例によって手を出さず。
2R バエス、ロープに詰めて連打。しかしクリーンヒットはないが攻勢、手数でナバレッテを抑える。
3R バエスの左フック3発、ナバレッテはすかさず反撃するがバエス優勢。
4R 互角の戦い。
5R バエスの左・右のフック2発ヒット。後半ナバレッテ打ち始めるが依然バエスのペースは続いている。
6R ナバレッテそろそろ反撃しないとゝ思ったか攻撃を強めてきた。右アッパーからの左フックのボディブロー 一発でバエス ダウン。膝をついたバエスはやがて仰向けに倒れ苦悶の表情で立ち上がれず6RKOとなる。
ナバレッテはバンタム級時代はその強打でKOの山を築いてきたが、フェザー級に上って相手の体も格段に大きくなり簡単にKOするのは難しくなり、過去3戦ともに12Rまで闘っている。この試合がナバレッテの価値が問われる大事なものとなった。6RのKOはさすがと思わせたが、それまでの5Rはバエスに押されておりフェザー級のクラスに順応したかは判断できない。そもそもナバレッテのパンチはスピードもなく大振りで、体力があり且つ突進力のある相手や、ボクシングが巧みで動きが早い相手に対してどうかとの一抹の不安は拭えない。Sバンタム級ではその迫力とパンチ力で弱点をカバーしてきたが、今後このまゝで乗り切れるか見ものである。
WBA Sライト級王座決定戦 試合日 2022年8月20日
スーパーライト級はイギリスのジョシュ・テイラーが2021年5月 4団体統一したが、2022年5月アルベルト・プエジョとの指名試合の拒否によりWBAの王座剥奪。2022年7月にはWBC王座返上。2022年8月 IBF王座返上し、現在はWBO王座のみ所有している。そこでWBA王座決定戦が今回行われた。
WBA Sライト級元暫定王者アルベルト・プェジョ(ドミニカ)28才 戦跡 20戦全勝10KO WBA Sライト級1位 ニックネームは「スズメバチ」
バティル・アフメドフ(ウクライナ)31才 2016年リオ五輪 L ウエルター級ベスト8(トルコ代表として出場)戦跡 10戦9勝8KO 1敗 WBA Sライト級2位
2人ともサウスポー。
アフメドフはガードを固めて前に出る。プエジョは長い右ジャブと左ストレートで迎え打つ。1~5Rあたりまで後退しロープに詰まりながらのプエジョの前進するところに右ジャブと左ストレートを的確に当てゝリードするが、中盤次第にアフメドフに内懐に入られて苦しくなり、常にロープに詰められての戦いとなる。12Rまでこの流れは変わらず、手数の多さと攻勢でアフメドフ、パンチの正確さと有効度でプエジョでこれを審判がどう見るかにかゝてきたが、有効打を取って審判の結果は117:111が2人プエジョ、115:113が1人アフメドフでプエジョが勝利してチャンピオンとなった。
試合の終了時にはアフメドフは勝利を確信していたようであった。また反対にプエジョは負けたかも?の表情であったが、自分の予想外の結果に喜びを爆発させていた。
1.Sライト級10回戦
ゲーリー・アントゥアン・ラッセル vs ランセス・バルテレミー
2. Sウエルター級12回戦 ダニー・ガルシア vs ホセ・ベナビデス
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1.Sライト級10回戦
ゲーリー・アントゥアン・ラッセル(米)26才 戦跡 15戦全勝全KO WBC Sライト級7位。
ランセス・バルテレミー(キューバ)36才 戦跡 32戦29勝15KO 1敗1分1無効試合 元2階級王者(Sフェザー級、ライト級)
1~5Rまでラッセル フィジカルの強さを前面に出して攻撃を仕掛ける。バルテレミーはリーチが長く長身であるが、足を使って距離をとることなく正面から打ち合う。接近戦でお互い一歩も引かずに激しく打ち合うが、6R ラッセルの右フックでバルテレミー ダウン。立上ったがファィテングポーズをとらなかった為にレフリーはTKOを宣言。
バルテレミーは猛然と抗議するも後の祭りとなる。バルテレミーは変則のスィッチヒッターで、誰もがやりにくい選手で、しかもパンチ力もあるカウンターも巧いところ、ラッセルは力でこれをねじ伏せた。ラッセルの兄は元フェザー級王者ゲーリー・ラッセル Jr.である。弟もいてボクシング3兄弟である。
2.Sウエルター級12回戦
ダニー・ガルシア(米)34才 戦跡 39戦36勝21KO 3敗 元2階級王者。
3敗はキース・サーマン(17/3/4)、ショーン・ポーター(18/9/8)、エロール・スペンス(20/12/5)の強豪ばかりではある。
ホセ・ベナビデス(米)30才 戦跡 29戦27勝18KO 1敗1分。 テレンス・クロフォードに12回TKO負して(18/10/13)王座から陥落している。
弟は現WBC Sミドル級王者の全勝の デビット・ベナビデス。
1R ガルシアの左ジャブで始まり、上・下に上手く打ち分ける。ベナビデスはガードを高くして圧力をかけて前に出る。ベナビデスの方がリーチが長く、ガルシアは自分のパンチの出る距離すなわちベナビデスの距離内で闘う方針のようである。
2R ガルシアは右アッパー、左右ボディブロー、コンビネーションとベナビデスのパンチを巧みに躱しながら実に上手く闘う。
3R ガルシアは予想外のディフェンスの冴えをみせベナビデスに当てさせない。
4R ベナビデス攻撃を強めて優勢に試合をすゝめこのラウンドをとる。
5R ガルシア右ストレートのボディ、左右の連続攻撃とメリハリの利いた攻撃を見せる。途中両腕をブラリ振って余裕をみせる。
6R ガルシアはこの試合振りに余裕をもったか、面白いように軽いパンチがヒット。
7R ガルシア最小限の動きでベナビデスの攻撃をみきり、試合の主導権を譲らない。
8、9R ベナビデスこれではならじと攻勢に転じて手数を増やす。
9R ガルシアの見た目の広い攻撃が冴えてリードを広げる。
10R 変わらず。
11R ベナビデス、左ジャブ、右フックで攻撃を強める。
12R ガルシア勝利を確信し自在にパンチを振って終了。
判定は116:112、117:111、 114:114で2:0 ガルシアの勝利。
ガルシアは元来受け身のカウンターパンチであったが、この試合は見違えるように左ジャブを多く出し、先手先手に攻めて主導権を渡さずに終始。至近距離でのベナビデスのパンチを悉く躱す技術の冴えをみせて見事であった。伝家の宝刀 左フックはついに一発も見せることなく終わったのは残念ではあった。
Sライト級では全勝。ウエルター級でも強打を生かし攻撃力、特に左フックの威力で対戦相手を後退させてきたが、Sウエルター級となると従来のようにはいかないようで、左ジャブ、左右ストレート・フック・アッパーと多彩なパンチを、時にはコンビネーションを使って早い攻撃を仕掛け、常に防御を考慮しながらポイントを稼ぐ方針に転換したようにみえる。今までとは別人のような試合振りであったが、基本がしっかりしており安定した姿勢を常に保ちながらのボクシングは流石に中量級強豪の一角を担い続けていただけはあると感心したが、このクラスには強打の4団体王者のジャーメル・チャーロがいて、その強打と圧力は段違いのもの。果たしてこれに対抗出来るのかとの域は否めない。また打倒チャーロの一番手にコンスタンチン・チューの息子チィム・チューが全勝で迫っている。
Sライト級8回戦
レイモンド・ムラタラ(米)25才 戦跡 16戦全勝12KO WBCライト級37位
ジャイール・バルティエラ(メキシコ)20才
4R 左フックでバルティエラ ダウンその後8ラウンドまで戦って80:71のフルマークでムラタラ勝利。
ムラタラはトップランク社所属の期待のホープであるが、確かにガードは高く、左ジャブも良く出て、堅実なボクシングではあるがスピード、パンチ力ともにさほどみるべきところなく、今後強敵と戦ってどう化けていくか疑問符がつく。
1.WBOフライ級タイトルマッチ チャンピオン 中谷潤人 vs 山内涼太
2.ミドル級王座統一戦IBFミドル級チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン vs WBAミドル級スーパーチャンピオン村田諒太
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1.WBOフライ級タイトルマッチ
チャンピオン 中谷 潤人(日本) 24才 戦跡 22戦全勝17KO 2度目の防衛戦。
挑戦者 山内 涼太 (日本) 27才 戦跡 9戦8勝7KO 1敗 同級2位
1R サウスポーの中谷は両拳をやゝ前に構えるデラホーヤを思わせるスタイルから、長い右ジャブ、左ストレートで試合を始める。懐の深い構えからストレート、左右のアッパー、上下のフックと多彩なパンチを振い、左アッパーで山内ぐらつくところに右アッパーで突き上げる。
2R 中谷、右アッパーからの左フックで山内ぐらつく。左ストレート上・下に、更に左ストレートを上から打ち下ろす。
3R 山内攻勢をかけるが、そのあと中谷の右アッパー ヒット。1Rからペースは完全に中谷に。
4R 自信をもった中谷は自在に動き、的確なパンチを次々にヒット。山内鼻柱傷つき左目の下腫れ上がる。
5R 山内、内懐に入り左右フックを振うがクリーンヒットせず。接近戦でも予想に反してショートパンチも巧みに操って、中間距離でも接近戦でも主導権を握っていた。
6,7R 中谷、右左ストレート、フック、アッパーを面白いようにヒット。山内の時折反撃にはしっかりとガードをかためて対処、防御も巧い。
8R 中谷の一方的なラウンドとなる。
9R 中谷、中盤以降倒しにかゝり、連打で山内ダウン寸前に追い込まれたところ、試合の趨勢を見ていたレフリーが、もはやこれ迄とストップを宣言TKOとなる。
試合は中谷のフルマークであったろう。山内も試合前に自分の特技は強打であり、技術的には明らかに不利であるので何とか強打を決めたいと語っていた。山内は中谷の右ジャブを躱して内懐に入り、持ち味の強打を決める作戦であったであろうが、中谷の右ジャブ、右フック、やっと入り込むと右・左のアッパーが待っており、技術的にも大きな差があった。あれだけ一方的に打たれ続け、しかも自分のパンチは当らないラウンドが続いたのによく闘った。
中谷選手は170㎝のサウスポーには珍しく攻撃的であり、しかもその利点を最大限に生かした長い距離からの右・右のジャブ、左ストレート、右・左のフック、右・左のアッパーを肩の力を抜いて自然にパンチを繰り出しており、山内はさぞやりにくい事であったろう。特に目をひいたのは接近戦での右フック、右アッパーで、これ程のアッパーカットを巧みに使える選手は日本にはいないのではないか。パンチ的中率も高く、防御も巧み日本ボクシング界で井上尚弥に次いで世界に知られる日も近いと思われる。前途洋々の逸材で、そのボクシングスタイルも今迄日本になかったものである。本人もフライ級4団体の統一と、Sフライ級での活躍の希望を持っており、やがては井上の達成したパウンド・フォー・パウンドも目指したいと語り、自信に満ちたその言や良し。
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2.ミドル級王座統一戦
IBFミドル級チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)40才 戦跡 43戦41勝36KO 1敗1分。世界タイトル戦17連続KO防衛の記録を持っている。ニックネームは「トリプルG」(グレイト・ゲンナディ・ゴロフキン)、1敗1分はいずれもサウル・カネロ・アルバレス戦で、1分は押しまくっての引き分けで大いに疑問の残るものであった。
WBAミドル級スーパーチャンピオン 村田 諒太(日本)37才 戦跡 18戦16勝13KO 2敗 対戦が計画されてから様々な障害があって2年4ヶ振りに実現した。
1R ゴロフキン左ジャブから始まり、右ストレート、左フックのボディブロー。村田もワンツーで対抗。
2R ゴロフキン一気に攻撃を強めて左ボディブロー2、右フック・ストレート、右アッパーと多彩なパンチを振う。中盤以降村田反撃、左ストレートを連発。
3R 前半はゴロフキンの攻撃が続き、上・下特にボディ攻撃は有効。後半1分は村田の反撃、特にボディに集中。村田鼻血を出す。
4R ゴロフキン中盤から攻撃を強め、手数の多さとパンチの多彩さ、的確さがめだつ。
5R 村田は攻撃の中心をボディと決めたか集中的にボディを狙う。顔面は仲々当らない為であるか。ゴロフキン ボディ攻撃を大半肘でブロック。村田も頑張って反撃するもパンチの精度に差がありペースはゴロフキン。
6R ゴロフキンの右フックで村田マウスピースをとばす。着装のあとゴロフキンの集中打で村田ダメージが蓄積してきたようだ。村田の主武器の右ストレートが真っすぐに出なくなりフックがかってきて、急速に威力が弱まる。ゴロフキンの攻撃が強まるが村田も時折反撃する事で、いまだ一方的とは至らない。
7R ゴロフキンの6~7割の力で振うコンパクトなパンチが実に的確。村田反撃するも劣勢は否めない。
8R 試合はゴロフキン優勢が一段と明らかとなり、村田も必死の反撃で何とか凌ぐ。
9R ゴロフキンの集中打で村田ダウン寸前に追い込まれるが、それでも村田最後の力を振り絞り猛然と反撃するところ、一歩下がったゴロフキンの右フックでぐらつくところ左フックの追い打ちで村田我慢の限界に達しついにダウン。試合の状況をみてきたコーナーがこゝまでとみてタオルを投入。ゴロフキン 9R2分11秒のTKO勝ちとなる。
村田も予想以上に頑張り、特にボディ攻撃は有効であったが、ゴロフキンの村田の堅いガードを破る技術、左ジャブだけでなくガードを横から攻撃する左フック、開いたガードを狙ってのアッパーカットと相手の隙を突いての冷静な判断による理詰めの攻撃は見事と言う外なく、機を見るに敏、チャンスとみれば集中打でたたみかけ、村田のパンチはまともに貰わない技術とスタミナ温存のテクニックと剛腕と思われていたゴロフキンとはまた異なるボクシングの奥の深さを我々に披露してくれた。相手の様々な出方に対しての柔軟な対応能力の高さはさすがのものがある。
試合後ゴロフキンから自分の愛用しているリングガウンが村田に贈られた。カザフスタンの民族衣装チェバンである。彼は「最も尊敬する人に贈るものです。だから村田選手に贈りました」と述べている。
村田のボクシングは左ジャブが圧倒的に少なく、その目的は試合をコントロールする為でもなく、相手にダメージを与える事でも、相手の出鼻を叩く事でもなく、たゞ得意の右ストレートを打つ為に相手との距離を計る事のみの役割しか与えていないようである。
それでもディオンティ・ワイルダーやアドニス・スティーブンソンのどこでも当たれば相手が倒れる程の威力があれば、それでも許されるが、それほどの威力はない。この右ストレートだけでパンチパンチ力もあり技術的にも優れた強敵とは戦えない。その右ストレートを当てる前の準備、つまり段取りが必要でもあるのだ。その右ストレートを当てる前の準備が必要でもあるのだ。しかし闘争心は最後まで失う事なく戦った事は立派であり、見応えある試合をつくった。ゴロフキンは今年中にアルバレスとの3戦目が決まったようである。
会場 テキサス州 サンアントニオ テック・ポート・アリーナ 2022年7月25日
試合日6月25日
1.WBA Sバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン ムロジョン・アフマダリエフ vs 挑戦者 ロニー・リオス
2.WBC Sフライ級タイトルマッチ
チャンピオン ジェシー・ロドリゲス vs 挑戦者シーサケット・ソールンビサイ
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1.WBA Sバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)27才 戦跡 10戦全勝7KO 2016年リオ五輪銅メダリスト アマ戦跡300勝20敗
挑戦者 ロニー・リオス(米)32才 戦跡 36戦33勝16KO 3敗。同級1位 レイ・バルガスに挑戦、敗れており2度目の挑戦である。
1R~11R アフマダリフェフ 右ジャブを多く使い、リオスの出鼻に左ストレート、4Rには左ストレートにリオス怯んだとみるや突然として右・左大振りのフックを思い切り振り回し、リオス ダウン寸前となる。その後も右ジャブを有効に使って自分のペースを探って、12R思い切った連打を再三にわたって打ち込み、左ボディブロー3発でリオスついにダウン。立上ったところに右左フックの連打でレフリーはストップ。
3度目の防衛を果す。
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2.WBC Sフライ級タイトルマッチ
チャンピオン ジェシー・ロドリゲス(米)22才 戦跡 15戦全勝10KO。( 兄はWBA王者ジョシア・フランコ)本人の正式名はジェシイ・ジェームス・ロドリゲス・フランコ。
2022年2月5日のWBC Sフライ級タイトルマッチはチャンピオン カルロス・クワドラスとシーサケットが対戦する予定がシーサケットがコロナの為に辞退。この前座として予定していたロドリゲスが代役として対戦した。誰もがシーサケットの勝利、そしてWBA、WBC王者のエストラーゼと対戦する予定であったがロドリゲスがダウンを奪って圧勝。今回シーサケットと対戦する事になった。
挑戦者 シーサケット・ソールンビサイ(タイ)35才 戦跡 56戦50勝43KO 5敗1分 サウスポー。当時パウンド・フォー・パウンドのローマン・ゴンザレスを倒し初の1敗を付け再戦でもKOでゴンザレスを下した強打者で、WBC Sフライ級のタイトルを2度獲得している。オッズは17:4でロドリゲス。
1R ロドリゲス ガードを高く掲げて開始。シーサケット右ジャブを突いて立上る。
2R ロドリゲス左サイドに少し動いて、左フックをボディに巧みな技術をみせる。
3R シーサケットはこのまゝではロドリゲスのペースになると読んで、パンチを振って前に出るがパンチはクリーンヒットせず、ペースは次第にロドリゲスへ。
4R シーサケットは相手の動きを止めるべくボディを中心に集中して攻めるが、さほど効果は上がらない。
5‐6R ペースを握ったロドリゲスはシーサケットのパンチの打ち終わりにワンツーを打ち込むが、前がかりのシーサケットにカウンターとなり、クリーンヒットが多くなってくる。
7R ロドリゲス、相手の攻撃を見切ったか、力を入れて倒しにかゝり、左フックが顔面にヒットしシーサケット左足を滑らせて倒れ、これがダウンと認定される。
8R ロドリゲス、相手のダメージを判断し、これが攻めどきとみて、連打で猛攻。レフリーストップを呼び込んだ。8RTKO勝ち。
ロドリゲスは防御に自信を持っており、ガードで相手の攻撃を総てストップ。シーサケットは強打者の為に力一杯パンチを振う為に打ったあとに空白が生じ、そこを狙われてスピードとタイミングのパンチは悉くカウンターとなってダメージを重ねていった。ロドリゲスは若さに似ず、機を見るに敏で、相手の特徴を素早く見極めて有効な手立て講じて、試合を構成しこれに従って試合を進めていった。詰めも万全で危険は冒さずに、試合を進めている。多分軽量級のスーパースターになるかも知れない逸材とみた。
1.Sフェザー級8回戦 ジェシー・マグダレノ vs エディ・バレンシア
2.WBOミドル級暫定王者決定戦 ジャニベク・アリムハヌリ vs ダニー・ディグナム
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1.Sフェザー級8回戦
ジェシー・マグダレノ(米)30才 戦跡 29戦28勝18KO 1敗 元WBO Sバンタム級チャンピオン。2016年12月ドネアからタイトルを奪取したが2018年ドグボエとの全勝対決に11RKOで敗れ初の1敗。2020年6月以降2年ぶりの試合である。
対戦者 エディ・バレンシア(メキシコ)31才 戦跡 32戦19勝7KO 6敗6分1無効試合。
1R から8Rまで体格で勝るバレンシアは圧力をかけて前に出るところ、マグダレノは右ジャブを有効に使って、打っては離れてのアウトボクシングに徹して、右フックを時折きめて、終始優位に試合を進めて圧勝。
判定は80:72 のフルマークが3人の結果であった。
全ての面で格の違いをみせた。しかしこの程度の力量では、このクラスでは無理がある。ドネアが何でこの程度の選手に敗れたのか不思議ではあり、体調不良か、何処か故障があったとしか思えなかった。
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2.WBOミドル級暫定王者決定戦
ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン)29才 戦跡 11戦全勝7KO 元世界王者 ロブ・ブラント、アッサム・エンダムを連破しており、ゴロフキンの後継者と目されているスター候補である。同位2位。
ダニー・ディグナム(英)30才 戦跡 15戦14勝8KO 1分 同位3位
1R お互いにサウスポーの右ジャブの突き合いからアリムハヌリの右フックのあと押さえ込んでの引き落としにディグナム ダウンを宣せられる。これは可哀想であったが、右フックがその前にヒットしており、やむなしか。
2R アリムハヌリの左ストレート2発軽くヒットのあと、ディグナム自ら腰くだけでよろめいて膝を2度つく。1Rのパンチで足腰が定まらないようだ。左ストレート軽く2発ヒットのあと、ロープ際で右フックからの左アッパー顎に突き上げられて仰向けにダウン。レフリーはすぐさまレフリーストップを宣しKOを宣言。ディグナムのダメージは深く、試合終了後も起き上る事が出来なかった。
アリムハヌリはカザフスタン期待の選手であり、アマ戦跡は300勝8敗で強力なパンチとスピードも豊かで、防御技術もあるとみた。ミドル級のトップ戦線はWBA スーパー IBFのゲンナジー・ゴロフキン、WBAレギュラーのエリスランディ・ララ、WBCのジャモール・チャーロ、WBOのディメトリアス・アントラーデがいて、何れも強豪ぞろいではあるが、果たしてここに割って入れるか?
カザフスタン出身の歴代の世界王者はSフェザー級のアナトリー・アレキサンドロフ( ブラジリアン・ボンバー : アセリノ・フレイタスに1R壮絶なKO負けが強く印象に残っている。1999年8月のことである )、クルーザー級のワシリー・ジロフ、Lヘビー級のベイブット・シュメノフ、ミドル級のゲンナジー・ゴロフキン、バンタム級のザナト・ザギヤノフがいて何れもパンチ力があり、頑丈なタイプが多い。
会場 米国 ニューヨーク マディソン・スクエア・ガーデン・シアター
2022年6月 日 (試合日6月18日)
WBC、IFB、WBOLヘビー級 統一戦 オッズ6:1でペテルビエフ
WBC、IFB、WBOLヘビー級アルツール・ペテルビエフ 戦跡 17戦全勝全KO ロシア生れのカナダ国籍 37才
WBOチャンピオン ジョー・スミス(米)32才 戦跡 31戦28勝22KO 3敗 ニックネームは「シンデレラ・マン」建設現場で働きながらボクシングをしてチャンピオンとなった。
1R スミス長いジャブを突いて前に出る。ペテルビエフはスミスの周囲をサークリングしながら様子を見る。後半、右フックがテンプルに当たってスミス膝をつく。ダウン。
2R スミス前に出て、乱打戦になるが、ペテルビエフの右フックが頭部にヒットしてスミス膝をついて2度目のダウン。立上ったところにペテルビエフの連打にたまらず3度目のダウン。やっと立上ったところに左・右アッパーで顔面を突き上げられ、そのあとの右フックでレフリーストップ宣言。2R 2分19秒であった。
ペテルビエフ、試合のあとのインタビューで『 終わったばかりなので時間をかけないと実感がわかない気がします。2~3日経てば実感が湧くんじゃないでしょうか。私はいつも良いボクサーになりたいと思ってきました。今日の私は過去よりも向上しているようですネ。彼(スミス)のジョー(顎)が無防備だったので狙いました。今日は私がラッキーでした。彼は危険な相手でしたから、自分にも色々ミスがあったので、このあと検討したいです。』
ビボルとの対戦を望んでいるかとの質問に「統一戦で戦う方が興味深いと思います」等と終始、良い笑顔で丁寧に答えて、試合中とは別人のように温かい人柄がみえた。
さて、愈々WBA王者の全勝ドミトリー・ビボルの方はSミドル級4団体統一王者カネロ・アルバレスの挑戦を退けて、その実力を天下に示しており、4団体統一を目指して戦う準備は整った。お互いに過去最強の相手である。
会場 米国 アリゾナ州 グレンデール ヒラ・リバー・アリーナ 2022年6月13日 試合日5月21日
WBC Sミドル級暫定王座決定戦
前WBC Sミドル級チャンピオン デビッド・ベナビデス(米)25才 戦跡 25戦全勝22KO ニックネームは「レッド・フラッグ」20才で同級のタイトルを獲得している実力者。
元IBF 同級チャンピオン デビッド・レミュー(カナダ)33才 戦跡47戦43勝36KO 4敗 デビューから20連続KOの記録を有している強打者。
1R レミュー先手をとって攻め込み、ベナビデスを2~3度ロープに詰めて左・右フックを振う。これをガードで防御していたベナビデスは後半に入ると反撃を開始し、強烈な左フックでレミューぐらついて、あわやダウンと見えたとみるとベナビデス猛然とレミューをロープにつめ、雨 あられの乱打を浴びせたところでゴングにレミュー救われる。
2R レミュー打ち勝つしか手はなく、打って出るところにベナビデスの左アッパーでレミューダウン。立上ったレミューも必死で反撃するが、ベナビデスのパンチが当る度にぐらつく。
3R レミュー打って出るが10㎝の身長差、リーチ差もあって、パンチが届かないところにベナビデスのパンチがヒット。レミューのぐらつき振りをみてレフリーTKOを宣言した。レミューの顔は血で染まりダメージの深さを現している。
このクラスの4団体統一チャンピオンはサウル・カネロ・アルバレスであるが、カネロはベナビデスとの対戦を嫌って、為に対戦が実現できていない。
カネロは9月ゴロフキンと3度目の対戦が決まっており、その結果次第ではその勝者とベナビデスが対戦する見通しも出てきた。このクラスでの一番はベナビデスかも知れない。
あのゴロフキンも、はや峠を越えた感があり、カネロは基本的に待ちのボクシングで、どの試合でも一貫して優位に立つスタイルでない為に、巧い選手を苦手にしている事からでもある。ベナビデスは常に積極的で、防御も巧みでパンチも強く、連打もきいた穴のない安定した試合を続けている。足が揃う欠点もあるが全クラスを通しても頭抜けた選手である事は間違いない。
会場 米国 NYブルックリン バークレイズ・センター
2022年5月30日 試合日5月28日
1.WBAミドル級タイトルマッチ チャンピオン エリスランディ・ララ vs ゲイリー・オサリバン
2.WBAライト級タイトルマッチ チャンピオン ジャーボンティ・デービス vs ローランド・ロメロ
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1.WBAミドル級タイトルマッチ
チャンピオン エリスランディ・ララ(米)39才 戦跡 34戦28勝16KO 3敗3分 2021年5月1日WBAミドル級王座決定戦でトーマス・ラマンナを1RでKOして王座につき、これが初防衛戦である。それまで Sウエルター級で8度防衛している。世界戦は14度目となる。キューバからの亡命者でアメリカンドリームを掴んだ。
挑戦者 ゲイリー・オサリバン(アイルランド)37才 戦跡 35戦31勝21KO 4敗 これまでビリー・ジョー・サンダース、デイビッド・レミュー、ハイメ・ムンギア、クリス・ユーバンク 等 強豪と戦っている。
1R ララ、予想に反して正面から打ち合う。オサリバンは体力を生かして前進し、左・右フックを振う。
2R オサリバンはララをロープに詰めてパンチを振うが当らない。ロープに詰まったララの左ストレート ヒット。
3R オサリバン前進するが、ララの的確なジャブ、左ストレートがヒットし顔面が傷つき始める。
4R ペースを握るべくオサリバン連打するが、ララのガードを割った左ショート・ストレート顔面を直撃しオサリバン ダウン。立上った足がもつれ危うかったがゴングに救われる。
5、6R オサリバン、ララをロープに詰めて必死に攻撃するが、ララ余裕をもってこれに対処し適度に右ジャブ、左ストレート、フックで反撃。
7R 終了直前にララの左ストレート クリーンヒットでオサリバン、ダウン寸前に追い込まれる。
8R ゴング前にオサリバンにドクターチェックが入る。開始早々ララの右ストレート直撃。オサリバン足がふらつき、ロープにもたれかかるところ、ララの追撃をうけて、レフリーはストップを宣した。
試合後のオサリバンの顔面は傷だらけでダメージの深さが窺えた。オサリバンはララの左ストレートが全く見えておらず、1ラウンドからそのパンチを受け続けており、この結果はやむを得なかった。
ララは従来の試合とは異なり正面から打ち合ったが、オサリバンの実力では正面から打ち合ってもパンチを食わないとの確信があったのであろう。ミドル級に上って力勝負も出来る事を見せたかったのであろうか。しかし、このクラスも強豪が揃っており、やはり今までの足を使っい、長いリーチを生かしてヒット・アンド・アウェイの戦術で戦うのではと思う。しかし接近戦で防御技術、至近距離でのパンチの的確さ等さすがに技術の高さを堪能する事が出来た。オサリバンとはボクシングのレベルが違いすぎたと云う事であろう。
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2.WBAライト級タイトルマッチ
チャンピオン ジャーボンティ・デービス(米)27才 戦跡 26戦全勝24KO 3階級王者
挑戦者 ローランド・ロメロ(米)26才 戦跡 14戦全勝12KO
1R ロメロ、左ジャブを突いてやゝ前進、上体を後ろに残しデービスの左ストレートが当らないように細心の注意を払って立上る。デービス、ガードを高く揚げて様子見。
2R ロメロ、圧力をかけて前に出て、右フックが軽くヒット。
3R デービス、サークリングしてロメロの周囲をまわる。ロメロの左フック浅いがヒット。お互いにフェイントの掛け合いをしながらチャンスを窺う。
4R デービスの必殺の左ストレート、ロメロ外す。ロメロの右・左のフック振うがヒットせず。ロメロの右カウンター振うがヒットせず。
5R デービスの一発目の左ストレート、ロメロかわす。デービスの二発目の左ストレート軽くヒット。デービスの左ストレート顔面、ボディに軽くヒット。
6R デービス、試合中に客に声をかける。ロメロ、右フック胸に、返しの左フックを躱しながらのデービスのカウンターの左フックでロメロ ダウン。やっと立上ったが、足許がふらつき、レフリーはストップを宣した。
デービスはロメロの逆ワンツーを読んでいたようで、これを逃す事なく、一発で仕留めた。
この試合でのクリーンヒットはこの一発のみであったが、デービスのボクシングセンスと実力はロメロを遙かに上廻っていたのは明らかであった。5ラウンドまでの審判の判定は48:47、49:46、47:48 の2:1で僅かにデービス有利と出ていた。
ちなみにデービスのい最近の試合をみると
2017/1/14 IBF Sフェザー級 ホセ・ペトラザを7R、TKO
17/5/20 IBF Sフェザー級 リアム・ウォルシュを3R、TKO
17/8/26 IBF Sフェザー級 フランシスコ・フォンセカを8R、TKO
18/4/21 WBA Sフェザー級 ヘスス・クエンジャルを3R、TKO
19/2/9 WBA Sフェザー級 ウーゴ・ルイスを1R、KO
19/7/29 WBA Sフェザー級 リカルド・ヌニェスを 2R、TKO
19/12/28 WBAライト級 ユリオルキス・ガンボアを 12R、TKO
20/10/31 WBAフェザー級/WBA ライト級 レオ・サンタクルスを 6R、KO
2021/6/26 WBA Sライト級 マリオ・バリオスを 11R、TKO
何れも世界戦である。
デービスの凄いところは試合を支配されていても決して慌てる事なく、じっとチャンスを狙って必ず仕留めるところである。左、右ストレート・フック、左アッパーいずれも一発必倒の力を秘めて、当て勘も良く、防御技術も極めて高い。歴戦の勇サンタクルスを6R左アッパー、一発でKOした試合は見事なものであった。軽量級の中でも頭抜けた実力者である事に異論をはさむ者はいないであろう。あのメィウェザーの秘蔵っ子である。
会場 米国 加州 カーソン ティクニティ ヘルス スポーツ パーク 2022年5月19日 ( 試合日 5月14日 )
1.IBFウエルター級挑戦者決定戦 ジャロン・エニス vs カスティオ・クレイトン
2. 4団体統一 Sウエルター級決定戦 3団体統一チャンピオン ジャーメル・チャーロ vs WBOチャンピオン ブライアン・カスターニョ
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1.IBFウエルター級挑戦者決定戦
ジャロン・エニス(米)24才 戦跡 29戦28勝26KO1無効試合 IBFウエルター級3位。
カスティオ・クレイトン(カナダ)34才 戦跡 20戦19勝12KO 1分。
1R エニス右構えで始める。長い右ジャブで相手を完全にコントロール。2分過ぎに左構えに変えるがジャブの多さは変らず。
2R エニスの長いリーチを生かしたジャブにクレイトンのパンチが届かないまゝエニスのい右フックがクレイトンの左テンプルにヒット。クレイトン ダウンし、立上ったが足がふらつきレフリーは様子を見ていたが、ふらつきが続いた為にレフリーストップを宣言。これでエニスは19連続KO勝ちとなった。
エニスは今大注目の選手で、次はクロフォードかスペンスと戦う公算が大であり、大いに盛り上がる事であろう。又、全勝 全KO の WBA、WBC、WBOともに1位にランクされているバージル・オルティスもいて強豪のひしめくクラスである。
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2.4団体統一 Sウエルター級決定戦
3団体統一チャンピオン ジャーメル・チャーロ(米)31才 戦跡 36戦34勝18KO 1敗1分
WBOチャンピオン ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)32才 戦跡 19戦17勝12KO 2分、アマの戦跡は191戦181勝5敗5分けと敗けない選手である。
両者は2021年7月17日に対戦し、3者3様の判定で引き分けており、決着をつけるべくの第2戦である。2月26日、3月19日と2回試合が組まれたがカスターニョの負傷などで繰り延べとなったものである。
1R カスターニョ例によって高くガードを掲げて、立上り早々プレッシャーをかけて前進する。チャーロはこれを迎え打ち、ワンツーからの左ボディブローで対抗。両者激しく打ち合う。
2R チャーロはやゝ引きぎみ。カスターニョが前進し接近するとクリンチでこれを防ぐ。お互いにパンチはヒットする。
3R カスターニョの前進をチャーロ、左ジャブで止める。尚も接近するところチャーロは左右フック ヒットする。
4R カスターニョのプレッツシャーは続いて、カスターニョのパンチがヒットすると、打ち終わりを狙ってチャーロの左右ストレート、フックが当り、クリーンヒットは数発ずつ。
5R 前半カスターニョ、中盤チャーロの集中打のあと、後半カスターニョ猛反撃。
6R この試合の主導権を明らかにする為にカスターニョ攻勢を強めて、パンチが数発ヒット。チャーロ打たれて後退。効いたようだ。
7R チャーロの左フック有効でカスターニョの攻勢やゝ弱まる。
8R チャーロは相手の打ち終わりを狙って右ストレート、アッパーを有効に使い、カスターニョ得意の連打ができない。流れはチャーロに。
9R カスターニョの前進は止まらず、チャーロは打ち疲れか手数が減る。
***この時点でコンピューターが示すパワーパンチの数はチャーロ113発、カスターニョ116発と拮抗しており、審判の判定はカスターニョの攻勢を評価しているようだ。***
10R カスターニョ勝負にでて、打って出る。チャーロ後退を続けて手数も少なくなったが、突如左ショートフックがカスターニョのテンプルにヒット。さほど力強いパンチではないように見えたが、カスターニョ ダウン。やっと立上ったが、チャーロの連打で遂にKO、決着をみた。
前戦に比べてチャーロはロープに詰まることが相変わらず多かったが、打たれたら必ず反撃し、相手の打ち終わりに強烈なパンチを送り込み有効打は多かったのが目立った。二人とも目一杯戦い、実に見どころのある激しい打ち合いを見せてくれた。
これでチャーロはバーナード・ポプキンス、テレンス・クロフォード、オレキサンダー・ウシク、ティモフィオ・ロペス、カネロ・アルバレス、ジョシュ・ティラーに続いて7番目の統一王者となった。
ここでチャーロのボクシングを再考してみよう。
チャーロがあれ程の左右ストレートと右アッパーが強力であるにも拘らずKOが少なく、どの試合も常に後退するのは何故か? どのパンチも一発必倒の威力があるのは誰もが認めている。しかし、これが後退を続ける理由なのだ。どのパンチにも全力を込めて打つ為に、一定の溜めが必要で、手数の多い相手にはどうしても押されてしまうのだ。また力を込めたパンチを連続して打つことは出来ないし、長丁場になった場合スタミナももたないのは明白の事である。そこがスーパースターのゴロフキンとの違いである。ゴロフキンは左ジャブで相手をコントロールし、7,8分の力でパンチを振い、相手を弱らせてから力を込めたパンチを振ってKOの山を築いている。(注) 常に相手に圧力を加えて、自分のペースで試合を運ぶのだ。チャーロも速く鋭い左ジャブをもっているのだから、これを多用して相手を下がらせる事が大事で、パンチは強弱をつけて、今より数多く打ち、自分が後退する事のないようにすべきである。こうする事によって常に自分が主導権を握って優位に立てるのだ。今回の試合でもパンチの威力はあるが、試合はむしろカスターニョの方に主導権を握られていたようにみえる。後退を続けている為だ。
(注)ゴロフキンは17連続KO防衛の世界記録を持っている。
会場 米国 ネバダ州ラスベガス ヴァージンホテル 2022年5月9日(試合日 4月9日)
1.WBC Sウエルター級挑戦者決定戦 トニー・ハリソン vs セルヒオ・ガルシア
2.WBC Sウエルター級暫定王座決定戦 セバスチャン・フンドラ vs エリクソン・ルビン
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1.WBC Sウエルター級挑戦者決定戦
トニー・ハリソン(米)31才 戦跡 32戦28勝21KO 3敗1分 ニックネームは「スーパーバット」=(悪い奴)ジャメール・チャーロを番狂わせで破り、王座についたが2019年12月21日再戦で11R KO敗けを喫した。ジャレット・ハードにもKO負け、3敗は総てKOで敗れており必ずしも打たれ強くはない。
セルヒオ・ガルシア(スペイン)29才 戦跡 34戦33勝14KO 1敗 ニックネームは「エル・ニーニョ」=(神の子)、唯一の配線は2021年12月5日セバスチャン・フンドラに判定で敗れたものである。
1R ガルシア ガードを顔の前に立てゝ構え、圧力をかけて前に出る。ハリソンは様子見のあと、速い左ジャブを出す。
2R ガルシア、ハリソンをロープに詰めて集中攻撃を行うが全く当らない。ハリソンはロープに詰まりながら左ジャブ3発、左アッパーのボディブロー、ついて右フックを顔面に返す。有効打はハリソン。
3R ハリソンの防御技術は冴えており、ガルシアのクリーンヒットは許さない。
4R ハリソンの左ジャブは悉く前進するがガルシアにカウンターパンチとなり、そのあとの左アッパー、右フックもヒット。
5R ハリソンの速い左ジャブが悉くカウンターとなり、ハリソンの顔面腫れる。
7~10R 2人のボクシング技術の差が歴然としてきて、ハリソンは無理することなく楽しげに試合を終了。
判定は98:93が1人、100:90が2人でハリソンの圧勝であった。ハリソンのテクニックは素晴らしく、左ジャブのタイミング、鋭さと申し分なく、上・下の打ち分けも巧い。防御技術も実に巧みで、ウィービング、ダッキング、足の運びとボクシングの技術の凄さを堪能する事が出来た。技術で云えば全階級のうち5本の指に数えられるであろう。見事な試合であった。
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2.WBC Sウエルター級暫定王座決定戦
セバスチャン・フンドラ(米)24才 戦跡 19戦18勝12KO 1分 ニックネームは「タワーリング・インフェルノ」身長197㎝ 同級2位
エリクソン・ルビン(米)26才 戦跡 25戦24勝17KO 1敗 ニックネームは「ハンマー」、1敗はジャメール・チャーロで1R KO敗けである。
お互いにサウスポー。
1R フンドラ、前進して接近戦に出る。右ジャブ、右・左フック、左アッパー手数が多い。
2R フンドラの連打がヒット、右アッパーでルビン足に来る。フンドラ、アッパー主体に打ち込み、右アッパーでルビン ダウン。ルビンの反撃が奏功し始めていたところである。
3R フンドラ、ルビンをロープに詰めて決めにかゝる。ルビンも反撃し、お互いにパンチも当って激しい打ち合いとなるが、フンドラやゝ打ち勝つ。
4R フンドラ、接近戦に持ち込み、ルビンの反撃も激しくなるが、フンドラは意外にも打たれ強い。
5R 互角の打ち合い。
6R ルビンの反撃強まる。フンドラの攻撃手数は変わらないが手打ちとなる。
7R フンドラ攻撃を強め、力強いパンチを振う。左アッパーが主体。中盤からルビン猛攻撃でフンドラ ダウン。
8R ルビン チャンスであったが7ラウンドの攻撃で体力を消耗したか、立ち直ったフンドラの反撃に押される。フンドラこの反撃によって元気を取り戻す。
9R フンドラ先手をとって攻撃を一層強める。ルビンは手数が減って受け身一辺倒となり、このラウンド終了時レフリーはストップを宣言し、フンドラのTKO勝ちとなる。
ルビンの顔は腫れ上がって、この判定もやむを得ないと思われる。フンドラはプロ入り初めてのダウンを喫したが、体型に似ず接近戦を好み、長い手を折り畳んでジャブ、フック、アッパーを数多く繰り出して、その手数の多くは驚異的であり、特に左アッパーは有効であった。ファイティング・スピリットも充分で意外と打たれ強い。ルビンに右ジャブが少なかったことも幸いした。しかしジャメール・チャーロを考えた時、その左ジャブの速さ、強さ長い距離の左右ストレート、フックは規格外で、これに対抗出来るかやゝ心もとない感じがするが・・・・。
1・ミドル級4回戦 ニコ・アリ・ウォルシュ vs アレハンドロ・イバラ(註 ニコ・アリ・ウォルッシはモハメド・アリの孫 )
2.ライト級8回戦 キーション・デービス vs エステバン・サンチェス
3.WBC、WBO Sフェザー級王座統一戦 WBC王者 オスカル・バルデス vs シャクー
ル・スティーブンソン
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1.ミドル級4回戦
ニコ・アリ・ウォルシュ(米)21才 戦跡 4戦全勝3KO モハメド・アリ の孫。
対戦者 アレハンドロ・イバラ(米)28才 戦跡 8戦7勝2KO 1敗
1R 左フックからの右フックで2分50秒 ニコのKO勝ち。人気は高いが、防衛技術、パンチのスピードも甘く大成するのは難しいのではないかと思われる。
2.ライト級8回戦
キーション・デービス(米)23才 戦跡 4戦全勝3KO 東京五輪 ライト級銀メダリスト。決勝戦でアンディ・クルス(キューバ)に敗れている。(ちなみにアマ時代クルスに4戦して全敗しており、クルスのアマ成績は400勝9敗である。)プロ入りするやトップランク社と契約したスター候補である。
対戦者 エステバン・サンチェス(メキシコ)23才 戦跡 19戦18勝8KO 1敗
1~4Rまで デービスのスピード豊かなボクシングにサンチェスついていけずに一方的な展開となっていたが、5R デービスの左ボディブローが効いてそのあとのパンチにサンチェス グロッキーとなる。
6R ここが決めどころと集中打でレフリーストップ。デービスのTKO勝ちとなる。五輪組は何れもパンチが速く、当て勘が良いのが特徴であり、デービスも期待通りの試合を行っている。
3.WBC、WBO Sフェザー級王座統一戦
WBC王者 オスカル・バルデス (メキシコ)31才 2021年2月絶対王者ミゲール・ベルチェルトをKOに下して戴冠し、2度目の防衛戦である。戦跡 30戦全勝23KO 2階級王者。北京、ロンドン五輪出場。
対戦者 シャクール・スティーブンソン (米)24才 戦跡 17戦全勝9KO リオ五輪銀メダリスト。2021年10月23日3度防衛中のジャメール・ヘリングから10ラウンド相手の右目上負傷でドクターストップとなりTKOで戴冠している。
前試合の不出来からバルデスの評価が下がってオッズは 6:1 でスティーブンソンである。
1R サウスポーのスティーブンソン右ジャブを多発、ワンツーからの左ボディと快調に立ち上がる。バルデスは相手の右ジャブが邪魔で中に入れない。
2、3R 同様の試合で、完全にスティーブンソンのペースである。
4R コーナーから出たバルデスはマウスピースをするのを忘れてコーナーに戻る。試合再開後バルデス、左フックを大きく振るところ空振りとなり、ロープに崩れかゝるところにスティーブンソンのパンチを受けてダウンと判定される。本来はレフリーがその前に止めるべきであったろう。
5、6R あたりからスティーブンソンの右手の使い方が、あたかもつっかい棒のように出して相手を近づけない形を続けるようになり明らかな反則であるが、何故かレフリーはこれを制止しない。以後12ラウンドまで右ジャブで相手の前進を止めて、なお入ってくるところへ右ストレートを上・下に打ち分けたスティーブンソンが全く危なげなく試合を進めて勝利。 バルデスは一体どうした事か!
スティーブンソンの作戦はいつもの通りで解り切ったものなのに無策で、この試合を通じてのバルデスの左リードパンチの数は僅か6発に過ぎなかったのである。いきなりの右ストレートを振うが距離が取れずに身体も流れて、スティーブンソンの格好の餌食となっていた。あたかも4回戦ボーイがチャンピオンに稽古をつけて貰っている様で、メキシコ国民はそのだらしなさに腹を立てた事であろう。
判定は117:110が1人。118:109が2人でバルデスは完敗であった。第一はパンチが唯の一発も当たらないのだから当然の結果と云えるだろう。
一方のスティーブンソンである。前回タイトルを獲った試合もそうだったが今回も同様決められない選手で、これではビッグマッチはおろか、観客動員も思ったようにはいくまい。観ている方がイライラしてくる試合振りであるのはいつもの通りで、スティーブンソンと聞くとあまり観たくないと思ってしまうのだ。又試合後リング上で箱から指輪を取り出してリングに登った女性に結婚を申し込むパフォーマンスを行った事、試合の終了前10秒、リングを踊り回った事、試合中に何度も笑った事など、不謹慎さも目につき、対戦相手に対する敬意など微塵も感じられない嫌な選手の印象であった。
WBC ヘビー級タイトルマッチ
タイソン・フューリー(英国)33才 戦跡 32戦31勝22KO1分 WBCヘビー級チャンピオン2度目の防衛戦 ニックネームは「ジプシー・キング」
対戦者 ディリアン・ホワイト(英国)34才 戦跡 30戦28勝19KO 2敗 WBCヘビー級暫定王者 ニックネームは「ボディ スナッチャー」
同団体の統一戦である。
両者の体格
フューリー ホワイト
身長 206㎝ 193㎝
リーチ 216㎝ 198㎝
体重 120.1㎏ 114.87㎏
前日の計量でフューリーは「ベッドで共にしたチームメイトみたいなものだと」と語ったあと、あわてゝ「 クソ! こんな事云うつもりじゃなかったんだ。変なこと言ってゴメン」。「戦歴だけでボクシングを評してはいけない。1発当たればわからないのだから」と語っている。
1R ホワイト左構えで始まる。フューリーはちょっと戸惑ったようだ。ホワイトやゝ圧力をかけて前に出る。フューリー右ストレート、右フック ブロックの上に打つ。又小刻みなフェイントをかけてホワイトを揺さぶる。
2R ホワイト右構えに変更。フューリー右フックボディ、左フック、ジャブと相手の出鼻を叩く。ホワイト相手が大きいので右フック大振りとなり、空振り。
3R フューリーの左ジャブ冴えており的確にヒット。ワンツーも速い。コンビネーションも小さくスピードもある。
4R フューリーのジャブ正確にヒット。両者レフリー ”ブレーク” の声にも構わず打ち合い注意を受ける。ホワイトは右拳をしっかりと右顎につけて、フューリーの左ジャブ、右ストレートに対応。闘争心も充分である。
5R フューリー 左ジャブを数発、右ボディブローを3発続けたあと 突如ホワイトの警戒心かボディに集中したと見る間に速いワンツー顔面に、ホワイトぐらつく。
6R フューリー左ジャブ、右ストレートを軽く出した後、この試合始めての右アッパーを顔面に突き上げてホワイト、これが全く見えておらず仰向けにダウン、立上ったもゝのファイティングポーズをとったが足許がふらつき、レフリーはこれをみてストップをかけフューリーのTKO勝ちとなった。
試合のあと司会者が世界のファンに何かと水を向けるとフューリーは歌をうたいだし、会場の観客もそれに唱和して大合唱、大いに盛り上がった。フューリーはこの試合を最後と引退を匂わせたが果して・・・・・・。
1.WBC米大陸ライト級王座決定戦 ホセ・バレンスエラ vs フランシスコ・バルガス
2.ライト級10回戦 イザック・クルス vs ユリオルキス・ガンボア
3.WBAスーパー、WBC、IBF ウエルター級 タイトルマッチ エロール・スペンス vs ヨルデニス・ウガス
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1.WBC 米大陸ライト級王座決定戦
ホセ・バレンスエラ メキシコ生れアメリカ籍 22才 戦跡 11戦全勝7KO サウスポー
対戦者 フランシスコ・バルガス(メキシコ)37才 戦跡 32戦27勝19KO 3敗2分
1R バレンスエラ、左ボディブロー数発ヒット。ボディを打つとみせて突然の左フックを顔面に的中させる。予期していなかったバルガス ダウン。倒れ方をみてレフリーはストップを宣言。さすがタフネスを誇ったバルガスも完敗した。バレンスエラはボクシングがうまく、長いリーチを巧みに使って安定感もあり、楽しみな選手である。
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2.ライト級10回戦
イザック・クルス (メキシコ) 才 WBC、WBOライト級4位 前戦でジャボンティ・デービスに善戦で評価が上がっている。 戦跡 25戦22勝15KO 2敗1分
対戦者 ユリオルキス・ガンボア(キューバ)元3階級王者 戦跡 34戦30勝18KO 4敗 ニックネームは「グアンタナモのサイクロン」
1R クルスの左フックがガンボアの顔面に直撃。ガンボア足にきてぐらつき、その後も右フックでダウン寸前となるがゴングに救われる。
2R ガンボア劣勢をとり戻すべく積極的に打って出るところ、クルスの左・右フック4発でガンボア ダウン。何とか立上る。
3R クルスの左フックでガンボア2度目のダウン。ガンボアふらつきながら打ち合う。
4R ガンボア打たれたダメージ深く、パンチに力がなくなるところクルスの左フックで3度目のダウン。ここでレフリーがストップを宣言した。
クルスはジャブは一度も打たず、ストレートも打たない。たゞの左・右フックを振り回すのみの選手であり空振りも多いが、今回はツボに嵌って成功した。ガンボアは元々打たれ弱いところがあるが、直ぐに立ち上がるタイプである。 打たれるとむきになって打ち合い、ダウンを食らう事をくり返しているがガードをかためることもなく、これから選手活動を続けることは難しいのではないかと思われる。
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3.WBAスーパー、WBC IBFウエルター級タイトルマッチ
エロール・スペンス(米)32才 戦跡 27戦全勝21KO WBC、IBF ウエルター級王者 ニックネームは「ザ・トゥルーズ=本物」。イギリスの全勝王者ケル・ブルックを敵地で下して戴冠するやダニーガルシア、ショーン・ポーター、マイキー・ガルシア等強豪を次々に負かしてこのクラス テレンス・クロフォードと並んで、絶対的存在となっっている。パンチ力、スタミナ、防御力と完成したボクサーである。
対戦者 ヨルデニス・ウガス(キューバ)35才 WBA スーパーウエルター級チャンピオン 戦跡 31戦27勝12KO 4敗。ウガスはそれまでさほど注目されていなかったが、2021年8月マニー・パッキャオを番狂わせで破りタイトルを奪取。パッキャオを引退に追い込んだことで一躍注目を浴びたが、それでもスペンスとの実力差は誰もが認めるところであり、2020年12月から実に1年4ヶ月振りとなる。スペンスの負傷を加味してもオッズは5:1でスペンスであった。
さて1R 例によってスペンス右ジャブを突いて開始。ウガスは左ジャブを数発ボディにヒット。
2R ウガスはスペンスの右ジャブに対して、リターンの右フックを狙う。予想以上にこのリターンが速く、スペンスが圧力をかけて前に出ようとしても、ウガス体力を使って下がらない。
3R スペンス攻勢を強める。ウガス反撃がやゝ少ない。ウガスのスペンスの攻撃に対しての返しのパンチが力強く、なかなかスペンスのペースにならない。
4R 一進一退
5R スペンスはペースを取る為にエネルギーを使って攻撃を強める。ウガスの手数は少ないが、防御は固く後半反撃のパンチを振う。
6R スペンス途中でマウスピースを落とし、これを自分で拾おうとして探していたところにウガスの左フックでロープに飛ばされ、あわやダウン寸前となる。
7R スペンス猛然と攻勢に出て、ウガス受け身一方となる。
8R スペンスここぞと猛攻を続けてウガスの右目完全にふさがる。
9R 守勢に回ったウガス、反撃のボディブローがきいて、スペンスの攻勢が止まる。ウガスに右目確認の為ドクターチェックが入る。
10R スペンス優勢の中、ウガスの右目にドクターの確認が入ってドクターストップとなり、スペンスの勝利となった。
スペンスにとってこれまでのボクシング人生で一番の難敵であったろう。戦跡からみたら、すでに4敗もしておりKO勝ちも少ない事から試合前のインタビューでも、もしウガスが対等に向かってくれゝば、早い回でのKOであり、ボクシングで足を使ってくれば大差の判定で自分が勝であろうと証言している。しかしウガスは防御が固く相手の打ち終わりを狙ったリターンパンチも速く鋭いものがあり、又一発の威力はむしろスペンスを上回った感があった。特に左右のボディブローは強烈で予想をはるかに上回る強敵であったのである。もし右目がふさがらなかったら、この試合どっちに転んだか解らないスリルに満ちた試合であった。
一方のスペンスは相変わらずの試合振りであったが、通常の試合ではスペンスの右ジャブの威力と次いでの左ストレートで相手は後退していたが、ウガスは下がらずにスペンスの前進に対し、打ち終わりを鋭く力強いパンチで対抗。体力もあって中盤まではほゞ互角の状態あった。スペンスは中盤以降ギアをあげて一気に攻勢を強めて、その後も手を緩める事なく攻撃、その驚くべきスタミナにウガスは対抗できずに敗れたがスペンスの攻撃力が以前より弱まったのではの感があった。
これで残るのはテレンス・クロフォード戦のみとなって、世紀の一戦が楽しみとなった。
ウガスはパッキャオを破ったことで自分に自信を持ったのではないか。見違える程の強さをみせた。
WBCシルバーライト級タイトルマッチ
チャンピオン サウル・アブドゥラエフ(ロシア)27才 戦跡 15戦14勝8KO 1敗 1敗はデビン・ヘイニ、 WBC6位。
挑戦者 ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)36才 戦跡 53戦47勝29KO 6敗 元3階級王者
リナレス 栄光の軌跡
2007年7月21日 WBCフェザー級でオスカー・ラリオスを10R TKOに下しタイトル。
2008年11月28日 WBA Sフェザー級でワイベル・ガルシアを5R TKOに下しタイトル。
2015年5月30日 WBC ライト級でケビン・ミッチェルを10R TKOに下しタイトル。
2016年9月24日 WBAライト級でアンソニー・クロラを12R判定に下しタイトル。
2018年5月12日 ワシル・ロマチェンコを右ショートストレートのカウンターでダウンを奪うも10R TKOに敗れる。
1R リナレス、左ジャブを中心とし、左フックのボディブロー、左・右のボディブローで快調に立ち上がる。アブドゥラエフは固いガードで対応。
2R 1ラウンド同様左ジャブと左・右ボディブローでリナレス優勢。
3R 左ジャブからの左・右ボディ、左ジャブが速く鋭い為にアブドゥラエフは対抗できない。
4R リナレス右、左フックのボディブローを始め、上下に打ち分け、左ボディブロー再三に亘りヒット。アブドゥラエフ左ボディブローを放ってプレッツシャーをかけ始める。
5R 両者の距離が近くなってきた。アブドゥラエフの攻勢が始まった為であるか、リナレスの左ジャブが邪魔で思うように攻撃できない。
6R アブドゥラエフのプレッツシャーが強まると共に、パンチが当たり始まる。
7R 両者、ボディブローを中心に打ち合う。
8R 左ボディブローを始め、アブドゥラエフの攻勢強まり、リナレス鼻血を出す。
9~11R リナレス左ジャブを中心にアブドゥラエフの前進を止めるべく努力するが、パンチに力がなくなってくる。アブドゥラエフの攻撃強まり、劣勢に追い込まれる。
12R アブドゥラエフ、ポイントで負けているのを自覚し、逆転を狙って猛攻。狙っていた左フックが決まりリナレス ダウン。立上ったが戦闘能力を失って2度目のダウン、再度立上ったが連打を受けてレフリーストップとなる。
アブドゥラエフは6ラウンドあたりリナレスのスピードが落ちるまで防御中心に対応し、7ラウンド以後リナレスの攻撃力が弱まったのを見て反撃にでた。リナレスは9ラウンドあたりからパンチに全く力がなくなり、何とか逃げ切ろうとしたが、アブドゥラエフの12ラウンドの猛攻に屈した。
リナレスは中盤までスピードもあり、左ボディブローも良く、まことにスタイリッシュなボクシングを展開したが、パンチ力の低下は覆うべくもなく最後に掴まった。元々リナレスは打たれ弱いところがあり、反撃力では左ジャブで相手の出鼻を叩いて、尚相手の出るところにカウンターの右ショートストレート、アッパーを打ち込むカウンターパンチャーである。
リナレス今回の試合も、年齢の事もあって力強さに翳りがみられ、中盤以降のスタミナ切れもあり、ボクシング人生の終盤に差し掛かったと言えよう。
WBA 米大陸Sライト級王座決定戦 10回戦
ゲイリー・アントゥアル・ラッセル(米)25才 戦跡 14戦全勝14KO リオ五輪 ベスト8位 WBC Sライト級30位。3人兄弟の三男。 長男ゲィリー・ラッセル Jr.元フェザー級チャンピオン。次男アントニオ・ラッセル バンタム級ランカー。
対戦者ビクトル・ポストル(ウクライナ)38才 戦跡 34戦31勝12KO 3敗、3敗は ⓵テレンス・クロフォード 元Sライト級で4団体統一チャンピオン、現在はWBOウエルター級チャンピオン。パウンド・フォー・パウンドで常に2-3位に位置するスーパースター ②ジョシュ・テイラー Sライト級の現在4団体統一チャンピオン ⓷ ホセ・ラミレス Sライト級元2団体チャンピオン。 3戦とも判定負けしている。ポストルはウクライナ国旗をデザインとしたガウンとトランクスを着用して登場。
1Rからラッセル、猛然と攻撃。特に右フックは強力。9ラウンドまでポストルに反撃の機会すら与えず攻めまくった。10ラウンド、連続KOを狙って攻撃を強め、得意の右フックがポストルの顎にヒット、ポストルぐらつくところに追撃の連打でレフリーストップを呼び込んだ。ラッセルは初回から力強いパンチを振って攻めまくりポストルにペースを渡すことなくパンチの当て勘も良く、意外に防御技術も確かで危なげなく勝利を掴んだ。兄二人はテクニック重視であるが、三男のアントゥアルは攻撃最重視で全く異なる。
1. WBC Sフライ級王座決定戦 カルロス・クァドラス vs ジェシー・ロドリゲス 2. IBF Sフライ級タイトルマッチ チャンピオン ジュルウイン・アンカハス vs フェルナンド・マルチネス
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1. WBC Sフライ級王座決定戦
カルロス・クァドラス(メキシコ)33才 戦跡44戦39勝27KO 4敗1分 WBC3位
対戦者 ジェシー・ロドリゲス(米)22才 サウスポー 戦跡 14戦全勝10KO
この試合はクアドラスがWBC1位のシーサケット・ソールンビサイとWBC王座をかけて対戦する予定であったが、コロナの為中止となり、この試合の前座として決まっていたWBC Lフライ級6位のロドリゲスが2階級上げて急拠決まったものである。
クアドラスはファン・フランシスコ・エストラーダと2回戦っているが、いずれも僅差で敗れている。
1R ロドリゲスはガードが固く、右ジャブが鋭く上・下に打ち分けてボクシングがうまい選手である。足も速く上体も絶えず動かしている。クアドラスの若い頃は完全なファイターで打ちまくる選手であったが・・・・
2R ロドリゲスはワン・ツーのあと左ボディブロー、左アッパーのカウンターと調子にのってきた。
3R ロドリゲス接近戦で右に回り込みながらダッキングするクアドラスに対して右のアッパーカットを顔面に打ち込みクアドラス ダウン。普通、回り込んで左のアッパーを突き上げるのは通常のパターンであるが、ここで右アッパーを打つのは技術的に非常に難しい。クアドラスにはこのパンチが全く見えなかったのではないか。そのあと左ボディ・アッパーにクアドラス腰が引ける。
4R ロドリゲス1ラウンドを終って打ち合っても大丈夫と思ったのであろう。クアドラスに体格差にかゝわらず負けないと確信したと思われる。左・右のボディブローを効果的に打ち込む。クアドラスが元々ボディを打たれるのを嫌がるのを知っていたからである。クアドラスのスタミナは次第に削られてゆく。
5R ロドリゲスの左右ボディブロー有効。クアドラスの右アッパー3発を始め打ち合うが、ボディブローを打たれて腰が引けている為力強さに欠けて相手にダメージを与える事が出来ない。
6R ロドリゲス快調にとばす。左アッパーのボディブローから上に返す。クアドラス疲れてくる。
7R クアドラス、押されて後退ぎみとなるが、これではならじと必死に攻勢をとりパンチを振いこのラウンドをとる。
8R クアドラスがクリーンヒットを決めると必ずロドリゲスがその2~3倍の有効打で反撃されてペースを握れない。
9R クアドラスはボディを打たれるのを極端に嫌がり表情に出す。ロドリゲスはロマチェンコばりの右に動いて左アッパーを振う。
10R 前半ロドリゲス、後半クアドラスがであったが、クアドラスのパンチは横殴りとなっており相手にダメージを与える効果が薄い。
10~12R クアドラス必死に反撃するが体力の消耗が激しいかロドリゲスには体力が充分残っているようだった。
判定は115:112が1人、117:110が2人でロドリゲスの勝利であった。これで若い才能ロドリゲスはWBC Sフライ級の王者となった。これから試合を重ねる毎にどんどん強くなっていく事であろう。防御技術も充分パンチは相手の空いている所を狙って打ち、コンパクトで鋭く、右リードも良く出る。攻撃力は多彩で、特に左・右のアッパーカットが巧みで威力がある。足も速く頭の位置を絶えず変える等完成されたボクサーである感がつよい。楽しみな選手が出てきた。
2.IBF Sフライ級タイトルマッチ
チャンピオン ジュルウイン・アンカハス(フィリピン)30才 戦跡 36戦33勝29KO 1敗2分 2016年から9度防衛しており2021年12月にはWBOチャンピオン井岡一翔と統一戦の予定であったがコロナの為来日できず流れている。パッキャオ二世の呼び声が高い実力者である。
挑戦者 フェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)30才 戦跡 13戦全勝8KO アメリカのリング初登場。
1R マティアス先制攻撃をかけて左・右を思い切り振って前進。アンカハスは相手の出方をみる。
2R お互いに接近戦でボディを打ち合う。
3R お互いに接近戦で一歩も引かず打ち合う。
4R マルチネスの思い切りの良いパンチの力にやゝ押されるアンカハス。マルチネス左瞼切る。
5R お互いに打ち合うがマルチネスのボディブロー強烈でアンカハスたじろぐ。距離は完全にマルチネスのもので、アンカハス相手のペースに引き込まれる。
6R マティアスの左フックからの左ボディブロー クリンーヒット。アンカハスは打ち負けて動きがおかしくなってくる。
7R アンカハスこれではならじと手数を多くするが、威力はボディを相当打たれている為か大分低下してきて、活きの良い力一杯振うマルチネスのパンチにアンカハスよろめく。
8R アンカハスこのラウンド ガードを高くして手数で前進するが、威力は全く無くなり、有効打では断然マルチネス。
9R マルチネス益々元気になり左右フック5連発、加えてボディ打ちも忘れない。アンカハスまともにパンチを打たれ、辛うじて立っている状態となる。
10R アンカハスはもはやKO以外に勝てないと覚悟して大振りの左右フックを力一杯振うが、その都度返される。
11R アンカハス打たれて打ち返さないとレフリーストップを宣言されるので必死に打ち返しチャンピオンのプライドで倒されないよう頑張る。
12R アンカハス ダウン寸前となり辛うじてゴング。
判定 117:111が1人、118:110が2人でマルチネス番狂わせの新チャンピオンとなる。マルチネスはIBF Sフライ級11位の選手であり、国際的にも無名に等しかったことから、アンカハスに明らかに相手を軽くみた油断があったのは否定できない。そうでなければ本来アンカハスは一定の距離を保って、そこから踏み込んでパンチを繰り出すスタイルであるのに、マルチネスの接近戦での打ち合いに付き合っても大丈夫であろうと高を括って応じたことが、マルチネスの予想以上のパンチ力とスタミナに押されて続け、途中で戦術を変更するにはボディを打たれ続けて、不可能になってしまったのである。ペースを握ったマルチネスは元気100倍、予想以上の力を発揮したのである。
WBC米国シルバーSウエルター級王座決定戦
ヘスス・ラモス(米)20才 戦跡 17戦全勝14KO WBA ウエルター級11位
対戦者 ウラジミール・エルナンデス(メキシコ)32才 戦跡 17戦⒔勝6KO 4敗
IBF Sウエルター級12位、元世界王者を2人倒している実力者。
共にサウスポー。
1R エルナンデス先制攻撃をかけて打って出る。クリーンヒットはないが何発かヒット。ラモスはほとんど手を出さずに落ち着いて対応。
2R エルナンデス精力的にパンチを振い、ラモスを守勢に追い込む。ラモスの右フックヒット。ラモスはL字ガードで構え右肩を使ってエルナンデスの左に対応している。
3R エルナンデスの攻撃止まらない。ラモスは左・右のボディブローを中心にパンチを振う。
4R ラモスのボディブローに力を入れてきてエルナンデスの攻撃やゝ弱る。
5R エルナンデスの手数は変らないが、ラモスのボディブローが効いてきて消耗してくる。
6R ラモスの左フック2発顔面にクリーンヒット。エルナンデスぐらつくとみるやラモス猛攻連打でレフリーストップを呼び込んでTKOに仕留める。
ラモスは若さに似ずL字ガードを使って中間距離も接近戦もこなし、途中休むしたたかさも見せクレーバーな闘い振り。余裕をもって闘った。まだ20才の若さで、パンチにスピードと鋭さがもう少し加われば大いに将来が楽しめる。
1.フェザー級10回戦
ロベイシー・ラミレス(キューバ)28才 戦跡 9戦8勝4KO 1敗 ロンドン五輪のフライ級、リオ五輪のバンタム級で2大会連続の金メダリスト。鳴り物入りでプロ入りしたが、初戦でまさかの敗北。その後8連勝中。
対戦者 エリック・ドノバン(アイルランド)36才 戦跡 15戦14勝8KO 1敗
共にサウスポー。
1R ドノバン前がかりで出るところに左ストレートのカウンター決まりダウン。ラミレスは初戦の敗北からイスマエル・サラス トレーナーの指導もあってガードを高くガードを構えて防御に細心の注意を払って立上る。
2R ラミレスの右ジャブが的確で速く、ついでの左ストレート、フック、アッパーと多彩なパンチを振う。
3R ラミレスの左アッパーからの左フックでドノバン ダウン TKOに終わる。
さすがに鳴り物入りで登場したラミレスの巧さが目立ったが、防御もパンチの威力も目を見張る程のものは見られなかった。これから強敵との闘いが始まり、その能力をどう見せるのかが注目される。
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2.4団体統一 Sライト級 タイトルマッチ
チャンピオン ジョシュ・テイラー(英国)31才 戦跡 18戦全勝13KO ニックネームは「タータントルネード」
挑戦者 ジャック・カテロール(英国)28才 戦跡 26戦全勝13KO、 3年3ヶ月WBO1位で挑戦を待たされ続けていた。ニックネームは「エル・ガド」
テイラーはスコットランド、カテロールはイングランドの出身。会場はスコットランドで同国人同士の戦いであるがイギリス人にとってはイングランドとスコットランドの試合は国際試合とみなされており、カテロールの入場には会場から大ブーイングが浴びせられた。共にサウスポーでテイラーは攻防兼備。足も使え、中間距離もこなせるオールラウンドプレイヤーであり、闘争心も旺盛である。
1R テイラー攻勢、前に出るところカテロールの左ストレートでテイラー大きくのけぞる。
2R テイラー攻撃、圧力をかけて前進。カテロールの右ジャブからの左ボディブロー ヒット。
3R 攻勢はテイラー、カテロールの左アッパー、右フック ボディにヒット。テイラーのパンチは当らない。
4R 出てくるテイラーに退りぎみのカテロールの迎え打つ左ストレート顔面に、右フックのボディブローヒット。
5R カテロールの左右ストレートがクリーンヒット。
6R テイラー前進するがカテロールの右ジャブが邪魔となって有効なヒットなし。カテロールの左右ストレートがヒット。
7R 共にみるべき有効打なし。攻勢点でテイラーか。
8R カテロールの打ち下ろしの左フック2発でテイラー ダウン。テイラーにさしたるダメージはなさそう。
9R テイラー必死で前に出て左フック2発軽くヒット。
10R ポイントを取り返すべくテイラー前進する。カテロール ホールディングで減点1。
11R カテロール受けに回って手が出ず。テイラーもクリーンヒットなし。このラウンド終了後テイラーがカテロールのボディをかるく打って(挨拶代わりのようだった)減点1をとられる。
12R お互いにヒットなく終了。
判定 112 :113 、114:111、113:112 の2対1でテイラーの辛勝であった。
この試合の唯一の有効打はカテロールの8ラウンドの2発のみ、盛り上がりに欠けるものであった。テイラーのクリーンヒットは唯の一発もなく、有効打だけみればカテロールの方に軍配が上がるべきであったが、何せカテロールは基本的に待ちのボクサーで、この試合中一貫して後退を続けており、さりとて一発必倒のパンチの切れ味がある訳でもなく、これでタイトルを獲ろうとしても所詮無理というものであろう。
このクラスは中量級の中でも実力者の少ないところである。この下のライト級にはロマチェンコやジャーボンティ・デービスがいて、上のウエルター級にはクロフォードやキース・サーマン、ダニー・ガルシア、エロール・スペンスと強豪が揃っている。彼等に比べるとテイラーの実力はいかにも見劣りがすると言わざるを得ない。しかしヨーロッパではテイラーのようなスタイリッシュなボクシングは特に好まれているようで、地元イギリスでの人気は絶大である。
1.WBC、WBO Sバンタム級挑戦者決定戦 ルイス・ネリ vs カルロス・カストロ
2.WBC ウエルター級挑戦者決定戦 キース・サーマン vs マリオ・バリオス
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1.WBC、WBO Sバンタム級挑戦者決定戦
ルイス・ネリ(メキシコ)27才 戦跡 32戦31勝24KO 1敗 元2階級王者。ブランドンフィゲロアに手数で押しまくられて王座陥落、再挑戦である。 サウスポー、ニックネームは「バンテラ」(豹)
対戦者 カルロス・カストロ(米)27才 戦跡 27戦全勝12KO WBC、IBF3位。
1R ネリは左拳を胸の前に置き右は下げてL字ガードで構える。カストロはガードを高く掲げる。ネリのいきなりの左ショートストレート カストロの顔面にヒット。カストロ ダウン。カウント8で立上がり、ネリの猛攻をガードで固めて防ぎ、ネリ攻めきれず。
2R カストロはネリの左ストレートのカウンターを警戒し、防御を固めて対応。ネリは1Rの猛攻で体力を消耗し、このラウンド休む。
3~10R ネリはウィービング等で巧みにカストロの攻撃を躱して、時折攻撃を仕掛けて、あとは休むのパターンを繰り返してスタミナ消耗を防ぎ、ポイントを取る事に専念。一方のカストロはネリの作戦に翻弄されて一本調子の攻撃を繰り返し、術中に嵌って敗れた。
判定は94:95、95:94、96:93の2対1でネリに軍配があがった。凡庸な試合であった。
2.WBC ウエルター級 挑戦者決定戦
キース・サーマン (米) 33才 戦跡 31戦29勝22KO 1敗1無効試合。マニー・パッキャオに敗れて6年8度防衛したがタイトルを失い、2年7ヶ月振りの試合である。
対戦者 マリオ・バリオス(米)26才 戦跡 27戦26勝17KO 1敗。 2021年6月26日2度目の防衛戦でWBA Sライト級タイトルマッチでジャボンティ・デービスに11RTKOで敗れ二人とも再起戦である。
1R サーマン左ジャブからの右フックで始まり、左右フックを繰り出す。バリオス左ボディブローを放つ。
2R サーマン左・右を振り回す。バリオスも左ジャブからの右ストレート。アッパーを打つ。パンチはは鋭い。
3R サーマン ガードを高くして飛び込みざまに左フックのボディブロー威力あり。バリオス右アッパーヒット。
4R サーマンの右フック顔面にヒット。フェイントからの右アッパーにバリオスやゝぐらつく。勢いづいたサーマン攻撃を強める。
5R バリオス上・下に打ち分け、左ボディブロー有効。サーマンは飛び込んでの左・右・左のコンビネーションを振う
6R サーマンの左ジャブがカウンターとなりバリオスのけぞる。
7R サーマン距離をとって、いきなりの飛び込みざまの左右フックが良くヒットし始める。
8R サーマンの右ストレートでバリオスふらつく。次いでの左右フックヒット。
9R サーマン先手をとって攻め、途中休みながらメリハリのあるボクシング。
10~12R サーマン攻撃しては休むが当て勘は流石。
判定は117:111,118:110が二人でサーマン圧勝。サーマンは従来と比べて身体に筋肉がつきあたかも格闘家のようになっていた。パンチは左右フックを飛び込んで振うスタイルとなっており、従ってパンチの威力は以前程ではなくなっていた。
2年7ヶ月のブランクは掩うべくもない。一方のバリオスはサーマンにゴマカサレた感があったが、終盤までパンチの威力もスピードも衰えないのはさすがであった。対サーマン戦の決め手は、もっとボディを集中的に攻めるべきではなかったかと悔やまれる。サーマンは対パッキャオ戦でボディを打たれて敗れているからだ。あれだけサーマンに動かれると顔面にヒットするのは難しいし、ブランクも2年半に及んだことでもあり、動きを止める為もあり、体力の消耗を図ることからもボディ打ちがもっと必要であったのは明らかで、バリオスがボディ打ちが巧みな選手であったので尚更と悔やまれる。
尚TVの解説者は長谷川穂積氏と亀海喜寛氏で、どこか、誰かに気を遣っていたか、サーマンと休養前よりもスピードもパンチ力も上であると評価していたが、バリオス戦のサーマンはジャブが極端に少なく、左右フックが攻撃の主体であったが、スピードもパンチ力も乏しくパンチを振うときはワイドオープンとなっていた。2017年頃、当時ショーン・ポーターやダニー・ガルシアを激戦のうえ下して6年間で8度の防衛を果していたが、2年間休養、復帰戦を一試合して2019年7月マニー・パッキャオ戦に敗れてさらに2年半振りのサーマンはスピード、パンチ力、スタミナも格段に落ちており、実質4年半のブランクは被うべくもなかった。
今後のサーマンの相手は当然テレンス・クロフォード、とエロール・スペンスとなるが両者の速くて鋭いジャブの餌食となるのではと思われる。また、二人のパンチはバリオスより数段上でしかもコンパクト、そして多彩。最終ラウンドになってもスピード、パンチ力は衰えない。スタミナも有り余るほど余裕があり、今のサーマンは到底太刀打ち出来まい。
会場 米国 ニュージャージー州 アトランティック シティ ボルガタ ホテル&カジノ
2022年2月21日 ( 試合日1月22日 )
1.Sライト級10回戦 サブリエル・マティアス vs ペトロス・アナニヤン
2. WBCフェザー級タイトルマッチ
チャンピオン ゲイリーラッセル vs マーク・マグサヨ
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チャンピオン ゲイリーラッセル(米)
1.Sライト級10回戦
サブリエル・マティアス(プエルトリコ)戦跡 18戦17勝17KO 1敗 IBF Sライト級2位
ペトロス・アナニヤン(ロシア)戦跡 20戦16勝17KO 2敗2分
全勝できたマテイアスはアナニヤンと対戦したが相手を見縊ったか、7Rにダウンを奪われて初の1敗を喫し、その後2戦をKOで飾ってのリマッチである。
1~6R マティアスは敗けた反省からガードを高く据え、パンチはスピード優先で細かいもので手数を多くしてアナニヤンが打つ前に速いパンチを数多く打つことに心がけてきた。
1Rから接近戦で終始し、3Rからアナニヤンの顔が腫れ出し 7Rあたりからマティアス 力をいれて打ち始め 8Rアナニヤン打たれて弱ってきてパンチに力が失われてきた。
9Rマティアスの切り換えしの左フックが顎にヒット。アナニヤン ダウン。ゴングに救われたが、10R始める前にドクターチェックが入り、ドクターが指をアナニヤンの顔の方に動かし、目が正確にこれを追う事が出来るかを確認した、首を振る。
レフリーがストップを宣言し、9R終了時TKOで リベンジに成功した。
マティアスは従来自分のパンチ力に頼って防御を疎かにしてきたがこれを改善し、しっかりとガードで防御を固め、脇を締めてパンチを打ち側から出すようにつとめ、弱点を修正してきた。今後、ウィービング・ダッキングも加味してすることも考え、左ジャブをもっと多用するようになれば、チャンピオンも夢でない。
2.WBCフェザー級タイトルマッチ
チャンピオン ゲイリーラッセル(米)33才 戦跡 32戦31勝18KO 1敗。 1敗はロマチェンコ、2014年戴冠し現在まで5度防衛している。サウスポー
挑戦者 マーク・マグサヨ(フィリピン)26才 戦跡 23戦全勝16KO 指名挑戦者である。ニックネームは「マグニフィコ」(壮大)。
ラッセルは2年ぶりの試合で、その間父親が病気の上、片足切断。又弟死亡の悲劇にあっている。試合間隔が長いのは本人の身体上に原因があるのではないか、例えば拳を痛めやすいか等考えられる。
1R マグサヨの右ストレート、右アッパーが浅いがヒット。ラッセルは右ジャブで様子をみる。
2R マグサヨの右フックのカウンターヒット。ラッセルはマグサヨの出るところに左ストレートのカウンター狙い。
3R お互いにフェイントをかけ合い、ジャブを出し合う。
4R このラウンド中盤ラッセル、右肩を痛めた模様。しかしラッセルの左カウンターが2発ヒット。
5R ラッセルは右腕下げたまゝパンチは以降右は一切使わず、左ジャンプ、左ストレートのみで闘う。
6R マグサヨは攻撃を仕掛けるがラッセルの左ストレートのカウンターが鋭くて、攻め切れない。
7~8R マグサヨは圧力をかけて前進するが、ラッセルの左を警戒し、打つパンチはラッセルの巧みなボディワークでことごとく躱される。
9R みるべきものなし。
10R マグサヨこれではならじと無理に攻撃を開始し、ラッセルをロープに詰めて攻撃。有効打はなし。
11R ラッセルは左拳も痛めたようで、右も、左も全くパンチを出さなくなり、出しても撫でる程度となる。マグサヨも攻撃するが有効打はなし。
12R お互いにモタモタしたまゝ終了。
判定114:114が1人、115:113が2人でマグサヨが勝利。王座交替となった。
ラッセルはこれ程拳が脆くては現役を続行出来まい。マグサヨは最初から最後まで一本調子。左ジャブから右ストレート、アッパーと同じパターンで正面から攻め、ラッセルが左パンチを出すとすぐに攻撃を中心に距離をとって仕切り直しの繰り返し。相手が右腕が使えないのが解っているのに左フックをもっと多用するなり、ロープに詰めてラッセルの左パンチが飛んできても攻撃を続行するなりすれば良いのに、なにせラッセルは左一本しかないのだから。これ程頭の悪い選手は見ている方がいらいらする。近来これ程見ていられない試合は珍しい。ラッセルの右腕はパンチを打つことはおろか、防御にも使えない事に加えて11Rには左拳も故障して両腕が使えなくなった事態が明らかになったのに。マグサヨはこの試合を通じてクリーンヒットを唯の一発も当てる事が出来なかったのだから呆れる他ない。
会場 米国 ニューヨーク州ベローナ・ターニングストーン・リゾート&カジノ
2022年1月14日 (試合日現地1月15日)
1.WBO Sフェザー級10回戦
エイブラハム・ノバ(米)28才 戦跡 20戦全勝14KO
ウィリアム・エンカーナシオン(ドミニカ)33才 戦跡 20戦19勝16KO 1敗
1R エンカーナシオン先手を取るべく左ジャブ、右ストレートで前に出る。L字ガード、右ストレート2発顔面にヒット、ノバやゝ足元乱れる。
2R ノバ左ジャブを繰り出して前に出る。エンカーナシオンはガードを高く揚げて防御体勢をとる。
3R ノバの右ストレートかるいがヒット。ノバ動きが良くなりパンチも当たり始める。
4R ノバこのラウンドあたりからパンチを力一杯振う。エンカーナシオンやゝ打ち負けて後退し始め、
5R ノバの上・下の打ち分け、右々フックのボディブローが効いてきたようだ。
6R ノバのクリーンヒットが多くなり、エンカーナシオンも必死で反撃。頑張る。
7R ノバの右ストレート ヒットしてエンカーナシオン苦しくなりクリンチ等で防ぐがダウン寸前に追い込まれる。
8R 途中エンカーナシオンのコーナーからタオルが投げられTKOでノバの勝利。
ノバはうまいボクサーで離れても接近戦も巧み。パンチも多彩でスタミナもある。オールラウンドプレイヤーでチャンピオンも狙える素材である。
2.WBO Lヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン ジョー・スミス(米)32才 戦跡 30戦27勝21KO 3敗 スミスは建築作業員をやりながら対フォン・ファラ戦を闘い、そのあとでも仕事を続けていた。番狂わせのスミスで対ファンファラ戦のオッズは1:3、対バーナード・ポプキンス選2:5、Jハード戦1:3、E アルバレス戦1:2と劣勢を予想された試合を悉く勝ち切ってチャンピオンとなった。この試合が初防衛である。
挑戦者 スティーブ・ジェフラード(米)31才 戦跡 20戦18勝12KO 2敗 初戦2連敗から18連勝中。連敗のあとグレンコフ・ジョンソンのスパーリング パートナーとして呼ばれて注目され目が出た選手で、その後も固いガードと鋭い攻撃が見込まれてコバレフ、ペテルビエフ、アルバレス等名だたる強打者からスパーリング パートナーとして指名される。
1R スミス右フックを顔面、ボディと打ち始め、ロープに詰めてラッシュ。ジェラード固いガードで顔面、ボディを完全にブロック。
2R スミス、ジェラードをロープに詰めて集中攻撃。ラッシュのあと少し休む。ジェラードの反撃を待って空いたところを狙う。
3R ジェラード左フックのカウンター、左ジャブと攻撃を集中、後半スミス猛反撃。
4R スミス左右フックの連打で、ジェラードの攻撃のひまを与えず打ちまくる。
5、6R スミス、ジェラードをロープに詰めてこのラウンド力を込めた連打を打ち込む。
7R スミスの右ロングアッパー、ジェラードは後退することが多くなり、スミスのパンチをまともに受け始める。ボディへのパンチが効いてきたようだ。
8R ジェラード弱ってきてコーナーに戻るときに弱気な表情を見せる。
9R スミス、ジェラードをロープに詰めて軽い連打。ジェラードたまらずダウン。レフリーのカウント中に立上ることをせず諦めてレフリーKOを宣した。
それにしてもスミス、連打を毎ラウンド続ける。しかも力を入れたパンチで8Rになってもスピードが些かも衰えない無尽蔵ともみえるスタミナには驚くしかない。 今までタイトルを握ってもさほど評価が高くなかったスミスの力は、本当はもっと高かったのではないかと思わせるものがある。
このクラス WBAスーパーのドミトリー・ビボル、WBC、IBFのアルツール・ペテルビエフが共に全勝、そこにカネロ・アルバレスが参入。カラム・スミス、ヒルベルト・ラミレスも階級をあげて加わり、ジョー・スミスも加えて全階級きっての注目の階級となってきた。
会場 カナダ ケベック州モントリオール ベル・センター 2022年2月14日
1.S ウエルター級6回戦
バティルザン・ジュケンバエフ(カザフスタン)30才 戦跡 21戦18勝14KO 1敗2無効試合、初戦より2試合続けての無効試合のあと18連勝。マティアスに敗れて初の1敗、再起戦となる。
ファン・ホセ・マルチネス(メキシコ)35才 戦跡 38戦28勝20KO 10敗 戦跡中世界戦挑戦者4人と闘っており、最近の戦跡は3勝8敗と負けこんでいる。
1R ジュケムバエフは開始早々から右フック、左ストレート、右フックからの左ストレートでマルチネス ダウン。立上ったところにロープに詰めて連打でレスリーストップ。終わったあともマルチネス足許 足元定まらず。
2.Sライト級8回戦
アルツール・ビヤスラノフ(カナダーロシアのチェチェン生まれ)26才 戦跡 8戦全勝6KO
アラン・アヤラ(メキシコ)24才 戦跡 11戦9勝6KO 2敗
1R ビヤスラノフ右ジャブで圧力をかけついでの右フックでアヤラ ダウン。立上ったところに再び右フックで早々とTKOとなる。
ビヤスラノフはスピードもテクニックもあり、今後の注目選手である。
会場 米国 フロリダ州 ハリウッド セミノール ハードロック ホテル&カジノ
2022年2月7日(試合日1月1日)
IBF ヘビー級挑戦者決定戦
ルイス・オルティス (キュ―バ)42才 戦跡 36戦32勝27KO 2敗2無効試合 元WBA暫定ヘビー級チャンピオン 2015年10月にタイトルを獲得している。2敗はいずれもデオンティ・ワイルダー戦によるもの。しかし特に第1戦の7R ワイルダーをあわやダウン寸前まで追い込んだ試合が印象深い。ニックネームは「キング コング」。
対戦者 チャールズ・マーティン(米)35才 戦跡 31戦28勝26KO 2敗1分 IBF 2位 元IBFヘビー級チャンピオン。しかしタイトルマッチ獲得後85日目にアンソニー・ジョシアに2RKOで敗れタイトルを失う。ニックネームは「プリンス チャールズ」。
オルティスは14ヶ月振り。マーティンは23ヶ月振りの試合である。オッズは10:3でオルティス。
1R オルティス 右ジャブを突いて順調に立上がり主導権を握ったかにみえた。右ジャブでマーティンダウンしたかに見えたがレフリーはスリップと判定。その後マーティンの打ち下ろしの左ストレートでオルティス ダウン。なぜかマーティンは追打ちすることをせずにゴング(ストレートはオルティスの後頭部に当たったもの)
2R 距離はマーティンのもので、オルティスは距離を詰めたいところだがマーティンの右ジャブ、左ストレートの為近づけず。
3R お互いに左ストレートを同時に繰り出すが、ヒットはせず。マーティンはオルティスの出るところに左ストレートを狙う。
4R オルティスが距離をつめるところ、マーティンの右・左・右のコンビネーション浅いがヒット。そのあとマーティンの右ジャブがストレートのカウンターとなり、オルティス2度目のダウン。ゴングに救われる。
5R マーティンは左アッパーを振う。当らないがマーティンはすっかり余裕を持ったようで、動きも軽快となり終盤左ストレートにオルティスふらつく。
6R オルティスの突然の左ロングフック マーティンの顔面にヒット。マーティンぐらつく。そのあとオルティス猛攻撃をかけ、たまらずマーティン ダウン。左手をロープに挟まれて、これを外してもらった事で一呼吸したが、オルティスの攻撃は止む事はない。もつれてマーティン倒れたところ、レフリーはダウンと判定。マーティンに戦う意志なしと判断したレフリーはTKOを宣言して、オルティスの大逆転勝利となった。
マーティンは5ラウンド終わったところで勝利を確信した事であろう。やゝ警戒心を失いKO狙いに不用意に出たところ、左ロングフックをまともに貰って、すっかり効いて自分を失ってしまったようであった。パンチのある選手は恐い。これでヘビー級生き残りをかけた大事な一戦をマーティンは棒に振ってしまった。タイトル獲得の挑戦権を賭けた試合に敗れタイトル戦は夢と消えた。
会場 カナダ ケベック州モントリオール ベル・センター 2022年1月31日 (試合日2021年12月17日)
WBF, IBFLヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン アルツール・ペテルビエフ(ロシア)36才 戦跡 16戦全勝全KO ロンドン、北京 五輪出場
挑戦者 マーカス・ブラウン(米)31才 戦跡 25戦24勝16KO1敗 ロンドン五輪出場 ニックネームは Sir(サー)元WBA暫定Lヘビー級でバドウ・ジャックを破ってタイトル獲得したが、2019年8月ジャン・パスカルに敗れタイトルを失っている。サウスポーで足が速いテクニシャンである。
1R ペテルビエフは例によって高くガードを掲げてゆっくり前進。ブラウンは右ジャブを繰り出しながらゆっくり左右に回るが、やゝロープに詰まり気味。ペテルビュエフはブラウンのパンチをガードで防いで接近。自分の距離になるまで手は出さない。
2R ペテルビエフのプレッシャーが強まり、ブラウン、右ジャブではこの勢いを止められずロープに詰められる。
3R ペテルビエフはブラウンをロープに詰めることが今の主目的と考えているようで、ブラウンはたまらず右ジャブと左ストレートでこれを防ぐが、押されている為に威力がない。後半ブラウンをロープに詰めてクリーンヒットはないもゝの集中打をみせる。
4R バッティングでペテルビエフの額から出血。このラウンド以降最後まで流血は続く。ペテルビエフはレフリーに試合をとめられない為に攻撃を強める。
5R ペテルビエフ傷の具合を確かめる為にドクターチェックを受ける。そのあとブラウンはロープに詰められ集中打を受けて、接近戦に巻き込まれ自分のボクシングが出来なくなってきた。ペテルビエフは左右、上下とショートパンチを的確に送り込んでくる。
6R ペテルビエフの左ジャブが良く当り、ブラウンはロープ、コーナーに釘付けとなってきた。ペテルビエフはこの段階でも大振りはせずに左ジャブを有効に使い、ショートパンチを数多く打ってくる。
7R ペテルビエフはブラウンをロープに詰めて集中打のあとのボディブローからの右アッパーで辛抱していたブラウンも遂にダウン。何とかゴングに救われる。
8R ブラウン最後の勝負を賭けて攻撃に出るが、中盤を過ぎる頃からロープに詰められて打たれ始める。
9R ブラウン コーナーに詰められて集中打を受けダウン。立上れずにKO敗けとなる。
これでペテルビエフは5度目のタイトル防衛となった。ペテルビエフは全KO勝利を続けているが、パンチを力一杯振う選手ではなく、左ジャブを突いて多彩なパンチをコンパクトに的確に当て、打つタイミングを変え、打つ位置を変えての試合振りは、その技術の高さを改めて我々に示してくれた。
防御は総てガードであるが、その能力の高さも相当なもので、唯体力とパンチ力で勝ってきた選手ではないことを証明してくれたことは嬉しいかぎりである。
ブラウンの得意の足を使って戦うスタイルに苦戦が予想されるが、完全にこれを封じ切っての勝利であった。このクラスにはWBA王者で全勝のドミトリー・ビボルが居て統一戦が望まれる。
ペテルビエフにとって正面から打ち合う相手が最も好ましいが、昨今力で対抗する選手は見当らなくなり、巧い選手、又は足を使ってヒット・アンド・アウェイで対抗する選手が多くなってきたが、これらに対抗する技術もペテルビエフは相当なもので、まるで鶏を追い込むように相手の動きを封じて、結局は倒し切ってしまう技術の高さは改めて見直される。
1.WBCブリッジャー級初代王座決定戦 オスカル・リバス vs ライアン・ロジッキ
2.IBFクルーザータイトルマッチ チャンピオン マイリス・ブリーディス vs アルツール・マン
3.Sミドリ級10回戦 デビット・ベナビデス vs カイロン・デービス
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1. 会場カナダ ケベック州モントリオール オリンピア・センター 2022/1/24
試合日 2021/10/22
WBCブリッジャー級初代王座決定戦
従来のクルーザー級は90.70kg以下であったが、ヘビー級選手の平均的体格が大きくなる傾向が強まり、実質的にクルーザー級との差が拡大した為にクルーザー級とヘビー級との間に101.60kg以下のクラスを新設し、ブリッジャー級とした。しかしボクシング界に反対意見が多かったのも事実であり、過去タイソンも小柄であったし、ホリフィールドもクルーザー級出身。現WBA、IBF、WBOチャンピオン オレクサンドル・ウシクもクルーザー級出身であることから、今でも17階級と多いクラスにさらに増やすことに否定的な意見もあった。しかし新設を支持する声が多くブリッジャー級が決定し、その初代チャンピオンを決める試合である。
オスカル・リバス(コロンビア)34才 同級1位 戦跡 28戦27勝19KO 1敗
ライアン・ロジッキ(カナダ)26才 同級15位 戦跡 13戦全勝全KO
リバスはヘビー級からクラスを下げて、ロジッキはクルーザー級からあげて闘う事となった。
1R リバス 先制攻撃をかけてパンチを振う。ロジッキは中盤からペースを握ったかにみえたが、終盤リバスの右ストレートで追い込まれダウン寸前となるが、辛うじてゴングに救われる。
2R 試合は体格差とパンチ力、リードパンチの差でリバスに利があるが、ロジッキは打たれ強く、ガードを固めて接近戦に持ち込みペースを掴む。
3R 離れるとリバスの左ジャブの威力とパンチ力に負ける為、ロジッキは接近戦に活路を見出し、頭をつけて打ち合う。
4~6R 3R同様有効打でリバス、手数でロジッキで進行。
7Rロジッキはリバスの体力とパンチ力に次第に押され始めて、11Rリバスの左フックでロジッキはダウン寸前となるが、リバスも疲れており追い切れない。
12R 両者力を振り絞って打ち合いのまゝ終了。
判定は116:111が一人、115:112が二人でリバス勝利。初代のチャンピオンとなる。リバスは左ジャブが鋭く、かつ正確で右パンチも強く、途中休むところは休んで体力の温存をはかって試合運びも巧みであった。ロジッキは驚異的な粘りとタフネスで対抗したが、如何せん、パンチにスピードも力強さも乏しく、接戦ではあったが、当然の結末であった。
2. 会場 ラトビア アリーナ・リガ 試合日 2021/10/16
IBFクルーザー級タイトルマッチ
チャンピオン マイリス・ブリーディス(ラトビア)戦跡 28戦27勝19KO 1敗 この1敗は当時クルーザー級4団体チャンピオンであったオレキサンドル・ウシクでその後3団体統一チャンピオンのヘビー級アンソニー・ジョシアを下してチャンピオントなったている。挑戦者 アルツール・マン(ドイツ)戦跡 18戦17勝9KO 1敗。
マンはコロナの影響もあり仲々試合が組まれず、引退してパリ五輪出場を考えていた。 ブリーディスの方は仲々対戦相手が決まらずいたところ、たまたま戦跡も良かったマンに白羽の矢が立ったので、急拠5週間で体調を仕上げてこの試合に臨んだ。
1R マンは左ジャブを数発仕掛けて右ストレート3発アッパー1発軽いがヒット。ブリーディスは中盤から圧力をかけて前に出る。
2R ブリーディスの打ち下しの右ストレートでマン ダウン。
3R ブリーディスは左右、上下に打ち分け最後の力を入れたボディブローでマン2度目のダウン。辛うじて立上ったところに左ボディブローを打たれて3度目のダウン。一度立上りかけたが再び崩れ落ちて3R2分59分TKOを宣せられた。
ブリーディスはさほどスピードもパンチ力もあるように見られないが、左ジャブを突いて左右フック、ストレート、アッパーと多彩なパンチを打ち分けて防御も巧みな堅実な選手であり、初防衛に成功。ラトビアではスター選手で絶大な人気を誇っている。
3. 会場 米国 アリゾナ州 フットプリント・センター 試合日 2021/11/13
Sミドリ級10回戦
デビット・ベナビデス(米)24才 戦跡 24戦全勝21KO 前WBC Sミドリ級チャンピオン 2度タイトルを握っていたがともに体重オーバーでタイトルを剥奪されている。
尚 兄のホセは28才アマの戦跡は120勝5敗で元WBA暫定Sライト級チャンピオンであったが、テレンス・クロフォードに唯一敗れている。
対戦者 カイロン・デービス(米)27才 戦跡 19戦16勝6KO 2敗1分
1R ベナビデス 左ジャブを出しながらゆっくり前進。デービスはその圧力に押されてリングを廻って逃れる。
2R ベナビデスはガードを締めて高く構えて、かつ相手のパンチには素早く反応。デービスをロープに詰めると回転の速いパンチを繰り出して攻撃。
3R ベナビデスは一段と圧力を強め、デービスを追い回す。身体の回転を使わずに手打ちのパンチで50%程度の力で乱れ打ち。
4R ベナビデスはデービスをロープに詰めて連打。左フック、右アッパー途中必ずボディブローを入れ、多彩なパンチ。
5R ベナビデスの攻撃は加速。デービスも反撃しなければTKOを宣せられる恐れがある為に必死で反撃するが、後退しながらで威力のあるパンチは振えない。
6R 打たれても流石に防御が巧みでタフなデービスも試合が一方的な為弱ってくる。
7R ベナビデスはそろそろ倒しにかゝり、力をいれたパンチを振って連打するところ堪らずデービスのコーナーからタオルが投げ込まれTKOとなる。愈々これでベナビデスの対戦相手はカネロ・アルバレスに絞られてきた。カネロにとっては過去最大の難敵となる。しかしカネロはあまりベナビデスとは戦いたくないような話も聞こえてはきており、ベナビデスの長身で懐の深いジャブが良く出て、まるで軽量級のような速い連打と防御の巧みな相手を攻略することは至難の技である事からだ。4団体統一の絶対王者アルバレスがLヘビー級へ転向する意向をもっており、実現すると現在1位のベナビデス、2位のディビット・レミュー、3位のダニエル・ジェイコブスとそこに割って入ってくるミドル級の強打者ジャメール・チャーロの参入の話もあって、面白くなってくる。しかしレミューもジェイコブスも既に峠を越えた感があり、ベナビデスの優位は動かないところだ。云われるようにベナビデスには両足が揃う欠点はあるが、これを突く力量のある選手は今迄にない。
会場 ニューヨーク州マディソン・スクエア・ガーデン 試合日 2021年12月12日
1. S ウエルター級6回戦 サンダー・ザヤス vs アレッシオ・マストロヌンツィオ
2. ライト級6回戦 キーション・デービス vs ホセ・サラゴサ
3. ヘビー級8回戦 ジャレド・アンダーソン vs オレクサンドレ・テスレンコ
4. ライト級12回戦 ワシル・ロマチェンコ vs リチャード・コミー
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1.S ウエルター級6回戦
サンダー・ザヤス(プエルトリコ)19才 戦跡 11戦全勝8KO
アレッシオ・マストロヌンツォ(イタリア)26才 戦跡 10戦9勝3KO 1敗
1R 開始早々僅か10秒ザヤスの右ストレートでマストロヌンツィオ ダウン。立上ったところに左ジャブから右フック、ストレートで一方的となりTKOをレフリーは宣言。前評判の高い将来のチャンピオンと目されるザヤスは期待通りの試合であった。
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2.ライト級6回戦
キーション・デービス(米)22才 戦跡 3戦全勝2KO プロでこの成績のあとアマチュアに転向し、東京オリンピックのライト級で銀メダル獲得しその後再びプロに戻っての初戦である。
ホセ・サラゴサ(メキシコ)33才 戦跡 12戦8勝2KO 3敗1分
1R サラゴサ、ガードを固めて前進、プレッシャーをかけるが、パンチのヒットはせず、このラウンド後半からデービスのペースとなる。
2R デービスの左ボディブローを集中的に打たれ弱ってきたところに右アッパー顎に命中、サラゴサ堪らずダウン。立上ったところに左ボディブローで2度目のダウン。苦悶の表情で立上れずTKOとなる。
デービス スピード、テクニック、カウンターの巧さと流石にレベルの違いをみせた。
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3.ヘビー級8回戦
ジャレド・アンダーソン(米)22才 戦跡 10戦全勝10KO WBCヘビー級34位
オレクサンデル・テスレンコ(ウクライナ)29才 戦跡 18戦17勝13KO 1敗
1R アンダーソン左構えで始める。右ジャブを上・下に、次いで左ストレートで主導権を握り、後半は右構えに。
2R アンダーソン、このラウンド右構えにして、いきなりの右フックにヒット。テスレンコはガードを固めブロックしたが そのわずか上にパンチがヒットしてTKOに終わる。
上記3試合の勝者3人とも将来チャンピオンとなるような期待の選手であると評価されているが、ヘビー級のアンダーソンは全試合KOで来ている。しかし、これは対戦相手が弱い為で確かにボクシングは型通りに嵌っているいるが、目を見張るような特徴がなく、これから当たるランキングボクサーと闘ってこのまゝ通用するか、評価これからである。
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4.番外ニュース ロマチェンコ、コミー戦のに前に、ゲストとしてリングに登ったボクシング界の最大のスーパースター タイソン・フューリーが90才を迎えたトップランク社 CEO ボブ・アラムを祝って「ニューヨークのみんな 楽しくやっているかい、海を渡ってきたけど、たった5000マイルの距離だったよ。世界一の伝説のプロモーターの為に歌いに来たんだ。ボブはどこにいる?ボブ・アラム、ボクシング界のレジェンドだ。そして俺がこの惑星で最も偉大なボクサーだ。だから誰もが知っているあの歌をみんなで唄おうぜ!ハッピーバースデートゥーボブ!」フューリーはそのエンターティナー振りを今回も遺憾なく発揮した。
4.ライト級12回戦
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)33才 戦跡 17戦15勝11KO 2敗 ニックネームは「ハイテク」。3団体王者であったがティモフィオ・ロペスに惜敗してタイトルを失い、再起戦で中谷をKOで下し、これが2戦目である。このクラス4団体統一王者はロペスを判定に下したジョージ・カンボソス、WBAレギュラー王者ジャーボンティ・デービス、WBC王者デビン・ヘイニ―がいるが何といってもロマチェンコがこのクラスの中心である事は間違いないところだ。
リチャード・コミー(ガーナ)34才 戦跡 33戦30勝27KO 3敗 ティモフィオ・ロペスに2RKO敗けでIBFのタイトルを失ってのこちらも再起戦であり、ボクシング界の有数のハードパンチャーである。
1R コミー 左ジャブを型どおり10数発、ボディブローを1発出すが、いつもに比べてやゝ腰が引けているようだ。
2R 1ラウンド様子をみていたロマチェンコの動きが急に活発になってくる。コミーは動きを止めるべくクリンチでこれを防ぐ。コミーの腕力は相当なものでロマチェンコがこれを振り解くのは仲々のようだ。
3R コミーは試合の主導権を握るべく接近戦を挑み連打するが、ほとんど当らない。ロマチェンコの右ジャブ速く、上・下に打ち分け、的確。上体を絶えずうごかし、前後、左右に動いてコミーに的を絞らせず、左ストレートのカウンター、コミーの顔面にクリーンヒット。
4R ロマチェンコの動きが一段と精彩を放ち細かいパンチが 精彩を帯びる細かいパンチがコミーの顔面、ボディに数多くヒット一方的となりコミーも何とか攻撃に転ずるが、打つ前に打たれ、打つと躱されカウンターを打たれてスピードと技術の差が歴然としてくる。
5R コミーがクリンチするところ、ロマチェンコ振り解いて左ショートフックを振う。タイミング絶妙。ウマイ!右ジャブからの左ストレートでコミーふらつく。細かいパンチをタイミング良く数多く浴びて、コミーのダメージが重くなってきた。
6R ロマチェンコすっかり余裕をもってきて、コミーの必死の攻撃を難なく躱し、自分のパンチを当てる。
7R ロープ際でロマチェンコの攻撃をクリックで凌いで、コミーがホッとした時右手をクリンチから抜いて距離を僅かにとったと見る間に、ロマチェンコの超至近距離から左フックのショートフックがコミーの顎を捉えて、コミー ダウン。立上ったコミーが足がふらつくのをみたロマチェンコはコミーのコーナーに、もう無理だから試合をやめるように訴えるが、これに応ぜず試合再開したロマチェンコは倒しにかゝるがコミー必死に耐えて辛うじてゴング。
8R ロマチェンコ 7ラウンドの猛攻でこのラウンド休む。
9~12R コミー何とか立ち直るが試合は一方的。コミーはKOを免れるのに精一杯のまゝ終了。
判定は117:110が一人、119:108が二人で、ロマチェンコの完勝であった。変幻自在の動きと防御に対する絶対の自信、完璧のガード。どこから出てくるか分からない多彩なパンチと当て感の良さ、相手の空いたところを見逃がさなずパンチを打ち込む鋭さに、相手は自分のパンチは全く当らずに一方的に打たれるこのような試合は過去歴戦の雄たちが悉く子供扱いされて途中ギブアップしてきた事はニコラス・ウオータースやギジェルモ・リゴンドー等で何度も見てきた。対ティモフィオ・ロペス戦も左手を負傷していた事が試合後判明、試合後手術している。それでも、この試合有効打は圧倒的にロマチェンコにあったのである。その後の中谷戦、今度のコミー戦をみてもロマチェンコの完全復活は間違いのないところで、4団体統一への道が再び見えてきたといえよう。
一方コミーはフェザー級のニコラス・ウォータース型の強打者で、普通に打ち合う相手ならば無類の強さを発揮することであろう。しかし相手が何せロマチェンコである。いつどこから飛んでくるか解らないパンチと打とうと思うとそこに相手が居ない為に打つタイミングが掴めず、無理にパンチを出すとその空いた部分を打たれ、また打つ前に打たれ自分のパンチは相手の身体にも当たらず殆んどが空振り、しかも軽いパンチでも正確にヒットされて精神的にも肉体的にも消耗してくることから、多くの有力ボクサーが途中棄権して試合を諦めてきたのである。しかしコミーは最後まで諦めずに一発逆転を狙って戦ったことはこの試合で評価を下げることはないであろう。
1.S ライト級10回戦
ブランダン・リー(韓国系アメリカ人)22才 戦跡 23戦全勝21KO、IBF Sライト級9位
対戦者 ファン・エラルデス(米)31才 戦跡 18戦16勝10KO 1敗1分 1敗はプログレイスに3R KO負けである。
1R エルナンデス積極的に打って出るが、リーの右フックがヒットしてエルナンデス消極的になる。
2R リー 左ジャブのボディブローさかんにだす。エルナンデスはりーのジャブの打ち終わりを右フックのカウンター狙い。
3、4R 一進一退が続いて5Rリーが攻撃を強めて右ストレートが数発ヒット。エルナンデス 上・下でパンチを受けて後退気味、このラウンドで鼻血を出す。
6R 5Rの流れを受けてパワーの差が出てきた。
7R 左フックからの右ストレート顔面に命中。エルナンデス後方に飛ばされてダウン。立上れずKOとなる。
リーは今までは踏み込みも鋭くパンチも思い切り振っていたが、相手のレベルも高くなり、注意深く試合をすゝめ、徐々に相手を弱らせたうえで、得意の右ストレートで仕留める巧みさをみせた。今大学に在籍し、IQも高く成績も優秀であるとの事。ニュースターの誕生を思わせた。一方エルナンデスは試合巧者でカウンターもうまく、当て勘も良く、完成された良いボクサーであった。
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2.WBCバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン ノニト・ドネア(フィリピン)39才 戦跡 47戦41勝27KO 6敗
レイマート・ガバリョ(フィリピン)25才 WBC暫定王者 戦跡 24戦全勝20KO
ドネアはフライ級からフェザー級まで5階級を制していたが、フェザー級でニコラス・ウオータースにKO敗けしてから低迷したが、クラスをバンタム級にさげて復活。2021年5月全勝チャンピオン ウバーリを4R左アッパーでKOして再度輝きをとり戻した。
一方ガバリョはエマヌエル・ロドリゲスを2:1の僅差の判定に下し暫定王座についた。同団体の統一戦である試合前の記者会見で英語が話せないガバリョの話を引き取って通訳を買って出たドネヤが後輩を気遣うやさしさをみせた。又自分について朝起きるとまるで20才のように感じて、このまゝで行くと50才まで現役を続けられそうだと語っている。
1R ドネヤの左ジャブから試合が始まり、ガバリョの左ジャブ、右ストレートは速く鋭く力感が溢れていて軽量級とは思えない緊迫した試合となった。
2R ドネアはガバリョの距離を始めから見切っていたように小刻みなスッテプを踏んで距離を詰め圧力をかけ、相手がたまらずに出てきたところに左フック、アッパーを繰り出す作戦で、主導権を完全に握っていた。
3R 一瞬も気を抜けない試合が続く。
4R ドネアは右ボディブローを2発のあと、左ボディブローを2発。ガバリョはドネアの左フック顔面に注意を集中していた為に、レバーへの左フックに対応できずダウン。苦悶の表情を浮かべて立上ることが出来ずにカウントアウトとなる。
ドネアは自信に満ちて試合に臨んで余裕をもって戦っており、ガバリョの顔面に注意を集中させておいて、左ボディに強烈なパンチを送り込んだ。最小限のエネルギーを使って、無駄な動きを拝しての完璧な試合であった。
一方のガバリョの体調の仕上がりはロドリゲス戦と比べて数段の出来で、そのスピード、パワーは一段と上達しており、ドネア以外であれば十分な王者であったろうと思わせた。
これでドネアと井上の実力の差は大分縮まったとみられて大一番に向けて期待が高まった。ちなみにファイトマネーはドネアの最低保障は20万ドル、勝利すれば更に15万ドル、合計35万ドルで呆れるほどに少ない。ドネアがこれに応じたのは次に井上尚弥との対戦で桁違いの報酬が見込まれるからであろう。
1.WBC ウェルター級挑戦者決定戦
セバスチャン・フンドラ(米)23才 戦跡 17戦16勝12KO 1分 同級4位
セルシオ・ガルシア(スペイン)29才 戦跡 33戦全勝14KO
フンドラは197㎝の長身、ガルシアは185㎝。
1Rから12Rまでガルシアは圧力をかけて前進。フンドラはガルシアの前進を止める右ジャブがない為に中に入られて、終始接近戦を強いられたが、彼自身接近戦が嫌いではないようで長い手を折り畳んで左アッパーを中心に迎え打つスタイルで対抗した。ガルシアは圧力をかけてパンチを振うが、フンドラの左フック・左アッパーが待ち受けているので、懐に入っても攻撃に結びつけられずに、フンドラの左ストレート、アッパーの餌食となって攻撃はとるが有効打は打つことが出来ずに敗北した。
115:113が一人、117:111、118:110でフンドラに軍配が上がった。
これだけの長身選手はガルシアとしても初めての対戦で大分戸惑ったようで自分の持ち味が出せなかったようである。
しかしこのWBCのチャンピオンは無類の強打者ジャメル・チャーロで今までの相手と桁違いの強打者でやゝひ弱さをみせるフンドラがどう戦うか見ものである。
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2.WBAライト級タイトルマッチ
チャンピオン ジャボンティ・デービス(米)27才 戦跡 25戦全勝24KO ニックネームはタンク、フロイド・メイウェザーの秘蔵っ子である。
挑戦者 イサック・クルス(メキシコ)23才 戦跡 24戦22勝15KO 1敗1分
1R 開始早々クルス猛然と前進。左フックを右フック デービスの顔面にヒット。先制攻撃をかける。
2R クルスの攻撃続くがデービスの右アッパー ヒット。
3R デービス やゝ落ちついてきて、前進するデービスに左・右のカウンターをあてる。
4R クルスのボディブロー 数発ヒット。
5R デービスのスピードあるパンチが次第に軽くではあるがヒットし始める。
6R デービスのボクシングが生き始め、自在に動き、多彩なパンチが際立ってきた。
7R 前半に掛かっていたクルスの圧力が弱り、デービスのボクシングが完全にすゝみ始める。
8R これではいかんとみたか、クルス攻撃力を強め盛り返す。
9R デービスにメィウェザーからゴーサインが出てデービス倒しにかかる。クルスもこれに応戦。
10R クルスはデービスをコーナーに詰めて攻撃するが、デービス余裕をもってこれを受け止め、攻撃を強める。
11R デービス、左手を痛めて左を全く出さず右だけで闘う。
12R 11R 同様。
判定 116:112が1人、115:113が2人で、デービス勝利したが不本意な試合であったろう。
クルスはガッチリと両腕でガードを固めてひたすら前進し、デービスのパンチをまともに喰わない作戦は功を奏し、倒されなく判定に持ち込んだクルスは攻撃力も耐久力もスタミナもあり、ガードも固いことからデービスも攻めあぐねたが、その能力の高さは随所にみせてくれて、そのスピードと威力、センスはスーパースターとしての存在感を存分に見せてくれた。